2016 Fiscal Year Research-status Report
「労働市場の社会学」からの民間職業紹介ビジネスの研究
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15K03839
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小川 慎一 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (30334618)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 求職方法 / 労働市場の社会学 / 縁故 / 広告 / 公共職業安定機関 / 直接応募 / 民営職業紹介機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は海外における求職方法について、日本との比較を考慮しつつ、文献に基づいて考察した。日本以外の国・地域として、EUやイギリス、アメリカのデータに基づく文献が検討材料となった。日本については、総務省統計局『労働力調査』や厚生労働省『雇用動向調査』が参考にされた。調査の方法が異なるため、厳密な比較は不可能であるものの、つぎのような異同が指摘された。 第一に、縁故あるいはパーソナル・ネットワークは、日本や海外でも主要な求職方法のひとつではあるものの、大部分の求職者が利用する方法であるとは限らない。第二に、EUの失業者やイギリスの求職者は、日本の失業者や入職者と同じように、広告の利用が多い。アメリカの失業者は広告の利用が少ない。第三に、EUの失業者やイギリスの求職者は、日本の完全失業者と同じように公共職業紹介機関の利用が多い。アメリカでは失業者であっても公共職業安定所の利用が少ない。第四に、雇用主への直接応募がEUの失業者やイギリスの求職者、アメリカの失業者にとって、一般的な求職方法である。日本の完全失業者にとって、雇用主への直接応募は一般的な求職方法ではない。第五に、民営職業紹介機関の利用がEUの失業者やイギリスの求職者、アメリカの失業者においても、ほかの求職方法に比べて相対的に少ない。日本の完全失業者や入職者と同様の傾向である。 以上の知見はつぎのような研究課題を示唆している。日本において、アメリカより公共職業安定所の利用割合が高く、ヨーロッパの多くの国々と同様にその利用割合が高いとすればなぜか。日本において、アメリカより広告の利用割合が高く、ヨーロッパの多くの国々と同様にその利用割合が高いとすればなぜか。日本において失業者による縁故の利用が少ない要因として、公共職業安定所による失業給付業務が関係しているのか。日本で直接応募が少ないのはなぜか。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は平成27年度に開始されており、同年度における進捗状況が遅れていたため、翌年度である平成28年度の進捗状況も連動して遅れている。平成27年度の進捗状況の遅れは、対象や方法をはじめとする研究課題へのアプローチについて試行錯誤した結果であった。平成28年度については利用可能な文献に基づき、着手が容易な対象から研究を進めていくことにより、順調とまではいかないものの、作業が円滑に流れる方向へ改善されている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の公共職業安定所が運営してきた高度ホワイトカラー職業紹介事業である、人材銀行の歴史的変遷について、すでに調査を始めており、次年度にその研究成果の一部を公開可能となっている。また、日本の高度ホワイトカラーの民営職業紹介事業の黎明期における事業者について、すでに調査に着手している。 今後はすでに着手している調査の進捗に応じて、近年における民営職業紹介事業の経営や、事業に関わる人々の仕事内容についても、調査を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
国際会議での研究報告を予定して研究費を申請していたものの、報告をしなかったため、その分の額を本年度中に使用できなかった。書籍やパソコン設備の更新等の使用に充てたものの、全額を使用できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍購入や資料収集、調査のための旅費として使用を予定している。
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Research Products
(2 results)