2017 Fiscal Year Research-status Report

「労働市場の社会学」からの民間職業紹介ビジネスの研究

Research Project

Project/Area Number	15K03839
Research Institution	Yokohama National University
Principal Investigator	小川慎一横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (30334618)
Project Period (FY)	2015-04-01 – 2020-03-31
Keywords	職業紹介 / 人材銀行 / 高度ホワイトカラー / 管理職 / 技術者 / 労働市場 / 中高年 / 公共職業安定所
Outline of Annual Research Achievements	管理職や技術者を対象とする高度ホワイトカラーの民営職業紹介は、1964年から法的に可能とされていた。そのようななかにあって、1966年から2016年まで旧労働省（現厚生労働省）によって、高度ホワイトカラーを対象とする人材銀行が運営されてきた。平成29年度は人材銀行の誕生の背景とその経緯について、論文を刊行した。人材銀行の誕生に関わった当時の公共職業安定所の担当者への聞き取りや所蔵資料に基づいて、その経緯を明らかにした。また、誕生の背景については聞き取りや所蔵資料を手がかりにしつつ、当時の官庁統計や政策担当者による書籍、既存の関連研究に依拠して明らかにした。具体的な結論は、人材銀行の誕生を可能にした要因と、その全国展開を可能にした要因の2つに分けられる。前者の要因として、(1)誕生に関わった当事者のキャリアに由来する要因、(2)当時の労働市場をめぐる状況、(3)職員や同僚の理解、の3つに分けて詳述した。後者の要因として、(1)メディアからの注目、(2)当時の労働政策との整合性、の2つを指摘した。今後の課題はつぎのとおりである。人材銀行は2016年（2015年度）に廃止されているが、その背景として2000年代以降の民間企業との対比や市場競争原理、「小さな政府」を目指す政策的な動向との関係で理解されることが求められる。1966年に人材銀行が開設されてから、人材銀行が民営職業紹介機関とどのように対比され、どのように事業展開をしてきたのか、また2000年代以降の政策的な動向のなかで、どのように位置づけられ評価されてきたのか、明らかにされる必要がある。この課題についても、当該年度中に資料収集を進めたところであるが、論文等の研究成果の公開は次年度以降の作業とする予定である。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 3: Progress in research has been slightly delayed. Reason 本研究課題は平成27年度に開始されており、同年度における進捗状況が遅れていたため、翌年度以降の平成28年度と当該年度の進捗も連動して遅れている。平成28年度には他国の入職経路の特徴、当該年度には日本の歴史的な背景に係る知見を部分的にまとめることができた。今後の作業を進めるための前提的な知見を蓄積しつつあることもあり、作業がより円滑化する方向に向かいつつあると認識している。
Strategy for Future Research Activity	すでに人材銀行と民営職業紹介機関の関係について、資料の収集を進めているところでもあり、昨年度と一昨年度に初期の民営職業紹介機関の創設者にも、聞き取りをおこなっているところでもある。今後はすでに収集した資料や聞き取り記憶に依拠して、人材銀行をめぐる政策的な動向や民営職業紹介機関との関係について、研究を進めていく予定である。また、いくつかの民営職業紹介機関を対象に、事業の歴史的な変遷と政策との関係についても、資料収集と聞き取りを続けていく予定である。
Causes of Carryover	（理由）聞き取り調査を実施するほど研究が進捗していなかったことや、研究の進捗と学会報告とのタイミングが合わなかったため、旅費の支出が十分でなかった。（使用計画）書籍購入、ならびに資料収集や聞き取り調査、学会報告のための旅費として使用予定である。