2020 Fiscal Year Research-status Report
「労働市場の社会学」からの民間職業紹介ビジネスの研究
Project/Area Number |
15K03839
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小川 慎一 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (30334618)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 有料民営職業紹介 / 高度ホワイトカラー / 管理職 / 技術者 / 人材銀行 / 労働市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、日本における「経営管理者」や「科学技術者」の有料民営職業紹介事業の草分け的な企業とその創業者が、現時点(1990年代後半以降)と比較して科学技術者の少ない1960~70年代において、どのように高度ホワイトカラー職業紹介事業を開始したのか、また、他事業者を含めその後の同事業の発展にどのように貢献したのかを研究した。 民営職業紹介事業は戦後から1999年の規制緩和まで、職種を限定されるなど規制が続いてきた.職業紹介事業のほとんどは公共職業安定所,すなわち政府による独占事業であった。そうしたなかにあって、管理職や技術者などの高度ホワイトカラーを対象とする有料民営職業紹介は、1964年から「経営管理者」や「科学技術者」として事業が可能となった。その一方で、政府による高度ホワイトカラーの紹介事業である人材銀行が、1966年に東京に開設されて、翌年から全国展開される。規制当局でもある政府事業との棲み分けと連携を対象企業の創業者は図った。また、規制対象とされた紹介手数料のみでは、有料民営職業紹介事業の経営が困難だったため、この創業者は政府との相談のうえ,規制対象外の収益モデルを開発した。さらにこの創業者は業界団体を結成して、同業者間の情報交換や利益表明をおこなう場を設けている。 当該業界団体はのちに、1999年の規制緩和につながる利益表明の母体のひとつとなる。この創業者の考案した収益モデルは、現在の有料民営職業紹介事業では一般的となっている。その一方で,有料民営職業紹介事業の成長は、政府が人材銀行を廃止する際(2016年)の根拠にされている。 この研究成果は、第93回日本社会学会大会(11月1日)にて、「労働市場の創造――1960~70年代における高度ホワイトカラー有料民営職業紹介事業の誕生」のタイトルで報告された。また、研究成果やこの報告を踏まえ、論文執筆の準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であれば当該年度中に学会大会発表だけでなく、論文を執筆・刊行すべきであったが、報告後に確認が必要な資料の不足が判明し、さらに資料収集を進めた。 また、改めて資料収集をおこなう過程で、対象年代より後の時代における対象企業の資料を見つけたため、当該資料との整合性を確認する必要も生じた。 そもそも、対象年代より後の時代における、高度ホワイトカラー職業紹介事業の業界全体における時系列的推移を含めた研究をおこなう予定であったが、まだその研究成果を出すに至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度における学会大会発表を踏まえた論文の執筆や刊行を、次年度中におこなう予定である。 また、当該年度における学会大会発表で対象とした年代よりも後の時代における、高度ホワイトカラー有料民営職業紹介事業の研究を、次年度中に進展させて、学会大会報告や論文の刊行のかたちで、研究成果を出していく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度において、新型コロナウイルス感染症の流行のため、学会大会がオンライン開催となったことや、資料収集や聞き取り調査等の機会が制約されたため、旅費の支出額が当初 予定より大きく減少した。 研究対象に係る図書の購入や資料の収集を引き続き進める。学会大会が対面形式で実施される場合は、旅費の支出の増加が期待される。ただし、新型コロナウイルス感染症の流行が沈静化しない場合は、パソコンを利用した作業に費やす時間が増えるため、パソコン関連の支出で代えることも検討する。
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Research Products
(2 results)