2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03846
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
牧野 厚史 熊本大学, 文学部, 教授 (10359268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十川 飛暁 四天王寺大学, 人文社会学部, 講師 (00508351)
川田 美紀 大阪産業大学, 人間環境学部, 准教授 (40548236)
藤村 美穂 佐賀大学, 農学部, 准教授 (60301355)
松本 貴文 下関市立大学, 経済学部, 講師 (70611656)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小河川 / コンパクトな流域 / 水利用秩序の重層性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の平成25年度は、実地での川利用の観察、地元住民および関係者へのインタビュー、資料の収集・解読に着手した。その際、柳川市の掘割の観光的利用、さらに農業用水としての利用の側面を視野にいれて、ヒアリングおよび資料の収集を行った。その結果、柳川市域の川と人との関係は、潮位の大きな変化への対処など、多くの点で他の有明沿岸地域の河川やクリークの利用と共通する特徴を持ちながらも、コンパクトな流域という固有の特徴を備えていることが明らかになってきた。コンパクトな流域とは、水という物質循環そのものではなくて、人々に意識されている社会的なまとまりのことである。すなわち、柳川市域では、中上流の農村域の水利用、城下町柳川の都市的な水利用、さらにその下流の干拓地における農業と関わる水利用を、住民たちや行政が一体的なまとまりとして理解している点に特色がある。さらに、このコンパクトな流域というまとまりは、近世以来の水利用の秩序とも関連性があることがわかってきた。その結果、今後調査を深めるべき次の二つの重点項目を確認した。第一に、掘割再生の背景にある小河川を舞台とした日常生活上のミクロな水利用と一級河川のような本流性河川についてのいわばマクロな水利用との重層性である。前者のミクロな水利用を理解するために、このような水利用秩序の重層性が形成されてきた歴史性を把握する必要がある。さらにその起源は、旧藩時代の河川利用秩序と連続性をもっている点を確認した。第二に、旧城下町の現代の掘割利用に代表される都市的水利用と、その下流における干拓地等での農業水利等の農村的水利用との関連性について、その持続と変容の実態解明を中心的課題に据える必要があるという点を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地元の住民との聞き取り調査および文献収集が順調に進捗している。その結果、今後の調査における重点項目について見通しを得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
概要で示したように、本研究の調査対象である柳川市域の川と人との関係は、コンパクトな流域という点に特色がある。その実態の把握には、収集した文献資料の分析とヒアリングデータの分析をうまく組み合わせる必要がある。そこで、本年度は共同調査と研究会を重視し、情報共有をさらに緊密にしながら研究を推進していく。また、比較の対象として筑後川の対岸に位置する佐賀平野のクリーク利用についても調査を進めていく。
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Causes of Carryover |
直接経費については、現地調査および大阪、東京での打ち合わせを、各種学会および学会のための委員会等の機会を用いて行うことが多かったことがある。さらに、舟を借り上げての調査を、地元の状況ならびに調査の進捗状況を勘案して、翌年度に実施することにしたことが理由である。また、間接経費については設備の更新を翌年度にまわしたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、上記の調査(舟を借り上げての調査)の実施、さらに研究会開催が予定されており、それらに支出する予定である。さらに、設備の更新を行う予定である。
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