2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03846
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
牧野 厚史 熊本大学, 文学部, 教授 (10359268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十川 飛暁 四天王寺大学, 人文社会学部, 講師 (00508351)
川田 美紀 大阪産業大学, 人間環境学部, 准教授 (40548236)
藤村 美穂 佐賀大学, 農学部, 准教授 (60301355)
松本 貴文 下関市立大学, 経済学部, 講師 (70611656)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 河川 / 稲作農業 / 掘割再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、福岡県柳川市域の掘割再生活動および下流に位置する干拓地農村での河川・水利用の変遷についての調査を進めた。また、佐賀県における有明海沿岸域の水路利用研究にも着手した。なかでも、柳川市域の干拓地農村においては、戦後の用排水の近代化過程を中心に、小河川と人々との関係の変遷について、かなり綿密な聞き取り調査を実施することができた。その結果、用排水の近代化によって利便性が高まった側面がある一方で、稲作を中心とする農村でありながら、用水の管理を行う人材確保に苦労し始めていることが明らかになった。水管理の人手不足は多くの農村が直面しつつある問題である。とはいえ、干拓地という不安定な環境のもとでの農業においては、この水管理のための人材確保は重要な課題である。さらに、地元の人々による水路等の維持管理のための細かな工夫が行われていることも聞き取り調査および文献調査に基づいて明らかにした。さらに、本年度は、研究成果の発信についても着手した。カナダで開かれた世界農村社会学会に参加し、研究成果の一端を紹介するとともに、様々なコメントを得た。また、地域で活動する住民の方々とも連携しながら、6月には、環境社会学会セミナーの場において「柳川掘割再生の三〇年」と題してシンポジウムを開催した。本研究の進行と連動した本シンポジウムでは、主に次の3点をめぐって議論が進められた。第1に、柳川市域という比較的コンパクトな流域において、様々な川と関わる活動があること、第2に、それらの活動が、立場の違いがありながらも、全体として新たな水社会ともいうべき関係を作り出していること、さらに、第3に、それらの社会関係は、環境の変化が心配されている巨大な内湾、有明海の今後の環境保全ともかかわっているとの示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、4月に熊本の震災という予期せぬ事態に見舞われたが、研究そのものは滞ることなく進展させることができた。ことに、研究成果の一部について論文公表や学会報告等による成果の発信に着手できたことは大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方法として、今までの調査で明らかになった知見についての量的調査による裏付けがある。量的調査については、規模や場所、さらに地元の方々との関係等を勘案しながら、今後、推進したい。また、本年度は、同課題にとって有益な情報を持つ専門家にも研究会に参加してもらい、成果のとりまとめに向けて、情報の提供を受ける機会を増やすことにしたい。
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Causes of Carryover |
震災の影響により、4月末から6月に予定していた研究会を一部とりやめ、その代わりに学会等の場所を利用した打ち合わせに切り替えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は、取りやめた研究会を実施し、情報提供者の招へいに資金を使用する予定である。
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