2016 Fiscal Year Research-status Report
被災地のまちづくりと生活再建に関する調査研究(釜石市と多賀城市を中心にして)
Project/Area Number |
15K03858
|
Research Institution | Sendai Shirayuri Women's College |
Principal Investigator |
高橋 早苗 仙台白百合女子大学, 人間学部, 教授 (90285685)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石沢 真貴 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (20321995)
今野 健一 山形大学, 人文学部, 教授 (70272086)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 東日本大震災 / 復興 / まちづくり / 生活再建 / 社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究は、東日本大震災の津波被害に直面した都市のなかから地域性の異なる二つの都市(岩手県釜石市と宮城県多賀城市)を主な調査対象地に選び、被災者個人・支援者団体へのインタビューや、行政資料の分析等の調査研究によって、被災者個人の生活再建のプロセスを明らかにするとともに、復興まちづくりに関わる計画・施策の比較、都市の再建プロセスにおける行政と住民の協働関係の実態を把握することを目的としている。 平成28年度は、釜石市、多賀城市および両市に隣接する被災した自治体の視察を行うとともに、復興まちづくりに関する資料の収集を行った。 釜石市周辺について、今年度は釜石・大槌・山田・大船渡の情報収集をおこなった。市中心部の空間再編を最も早く進めているのは釜石であるが、仮設住宅で暮らし続ける人々、仮設店舗で営業を続ける人々も多い。こうした人々の中には、生活再建の目途が立っていない人々が含まれており、ハード面での整備が進んでも解決されない問題である。岩手沿岸部で共通して見られた復興まちづくりの理念は、「コンパクト化」である。山田町はその中心施設が2016年度中に、大船渡市は2017年度春に開業し、まちの雰囲気が変わりつつあるが、大槌は整備が始まったばかりであり、いっそうの人口流出が懸念されている。 宮城県沿岸部では、多賀城、仙台、名取を観察した。図書館を中心にした駅前再開発を実施した多賀城市は中心施設の利用客の大幅増加がみられた。一方、名取については、震災から5年を経過した2016年度中にも、復興まちづくりの方針(特に被災者の居住地の選定)が自治体と住民の間ですれ違い、対応の遅れが顕著であると同時に、住民の行政に対する不満が募っている。 地理的に隣接していても復興の進め方や進捗状況は大きく異なってきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この研究は、東日本大震災による津波被災地の復興まちづくりをテーマとしており、数ヶ月単位で変化するプロセスを観察することも重要な作業である。その点については、釜石および多賀城市とその周辺自治体を複数回にわたって観察することができた。特に、岩手沿岸部も宮城沿岸部も、隣接する自治体間での進捗の違いが大きいことを、定期的な観察を通じて実感することができて有意義であった。 その半面、東日本大震災の発生から6年が経過しても、復興全体の遅れから進捗していない計画が多いため、調査研究としてどの段階で研究の区切りをつけるべきかについての判断が難しく、今年度予定していた報告書を作成できなかった。 また、視察・観察から得られた情報と、聞き取りで個別に得られた情報をどのように結び付けていくべきか、方法的な迷いがあるため、研究成果に結びつけることができないでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、引き続き研究分担者とともに釜石調査、多賀城調査、および隣接する周辺自治体の調査を並行して進めていく。特に、これまで継続的に実施してきた空間の再編状況の確認を数ヶ月おきに実施し、復興まちづくりのプロセスの把握に力を入れて、記録したい。 その上で年度中に、対象地域の復興まちづくりの理念や空間再編の進捗状況について、報告書を作成する予定である。 さらに釜石市の場合は、ラグビーのワールドカップ開催(2019)というビッグ・イベントが予定されているものの、津波被害地域でのスタジアム建設も途中であり、周辺地区の整備も現在進行形であることから、復興まちづくりと今後どのように交差していくのか、情報収集に努める。
|
Causes of Carryover |
繰越金が生じた理由は、ひとつに予定していた物品の購入を次年度に先延ばししたためである。また、本研究の特徴として、コンパクトな調査研究を目指していることから、旅費交通費を最小限に抑える工夫をしており、1回あたりの出張に使用する金額が少ないため、未使用額が生じる要因になっている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は前年度からの繰越金と合わせて約55万円の研究費を予定している。繰り越した金額は、まず、前年度に計画していた物品購入(印刷機器等)の購入にあてる。研究分担者については、今年度の仙台での打ち合わせの機会を増やすことで、旅費として消化予定である。 2017年度もまた、釜石および周辺の調査、多賀城および周辺の調査、仙台での研究会に研究費を充てるので、「旅費」(約15万円)、「その他(レンタカー代など)」(10万円)を予定する。復興まちづくりに関連する図書などの研究資料および消耗的備品をそろえるために「物品費」(15万円)、報告書の作成(5万円)などを予定する。
|