2015 Fiscal Year Research-status Report
伝統的技能職者の技術継承における現代的課題:学校教育・行政・同業者団体に着目して
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15K03859
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Research Institution | Tohoku Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
佐藤 直由 東北文化学園大学, 健康社会システム研究科, 教授 (00125569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪股 歳之 東北大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60436178)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 伝統的技能職者 / 技術継承 / 専門職養成 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)既存統計を活用した伝統的技能職者数の変動分析は、まだ数量的処理を進めている段階であり、十分な知見は得られていない。ここでは酒造業に関してだけ示しておきたい。国勢調査における職業小分類では、「酒類製造工」が昭和65(1985)年14,057人から平成7(1995)年16,523人に増加し、「酒類製造作業者」の新分類となった平成12(2000)年では17,234人、平成17(2005)年では16,777人であり、減少を示した。小分類では酒造業の伝統的技能職者の動向を把握することはできないが、清酒製造については、日本酒造組合連合会の会員数で概ねの動向をみることができる。平成10(1998)年に全会員6,142人(杜氏1,387人、三役1,597人、一般会員3,158人)であったが、平成27(2015)には4,881人となり、17年で約1,200人減少した。杜氏だけでは684人の減少、杜氏を補佐する三役では1,387人の減少を示した。季節労働として清酒製造を担ってきた蔵人の消滅傾向と高齢化が着実に進んでいる。またそれは酒造の機械化等の合理化が進展している結果でもある。 (2)伝統的技能職従事者の学歴・専攻分野の分析では、伝統的技能職従事者においても高学歴化が進んでいることを明らかにしようとした。本分析もデータの収集を進めている段階であり、十分な知見は得られていないが、酒造業に関わる事項だけを示しておきたい。酒造における蔵人(杜氏や三役など)の減少や機械化よる四季醸造は、若い社員技術者による酒造を推進することとなった。若い社員は主として大学卒であり、高学歴化を反映している。しかし、従事する職とは直接関わりのない分野を専攻した者が大半であり、正規雇用の中で技術を獲得し、杜氏の称号を得ている。以前、聴き取りを行ったT杜氏組合の社員杜氏は19人であり、その多くが大卒であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度の研究計画の実施が遅れた理由として、データの収集と先行研究の把握に期間を要したことと共同研究を進めるための研究打ち合わせをする機会を確実に設けることができなったことによる。そのため研究課題の精緻化があいまいとなり、具体的な資料収集調査、聞き取り調査の実施を実現するまでには至らなかった。また、対象を伝統的技能職者としているが、範囲を特定の技能職者に絞り込む段階で資料やデータの制約性の軽重の判断に時間を要したことも一因となった。 なお、代表者の職務が4月から重責となったこと、また、代表者の体調不良が長期にあったことも研究遂行の遅れにつながった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の進捗状況を点検評価し、研究課題の焦点化と調査計画の見直しを行い、以下の研究を遂行する。 (1)既存統計を活用した伝統的技能職者数の変動分析については、さらにデータの収集と数量的処理を進める。 (2)伝統的技能職従事者の学歴・専攻分野についての分析では、技能職団体・組合における会員名簿等の精査を行い、得られるデータの可能な範囲での収集と分析を進める。 (3)伝統的産業に対する行政の関与についての分析及び(4)同業者団体による地位向上のための取り組みとその変化についての分析では、酒造業に焦点を当て、各杜氏組合が認定する「杜氏」称号と日本酒造杜氏組合連合会が認定する「日本酒造杜氏」称号、そして厚生労働省が管轄する国家資格「酒造技能検定士」(1級・2級)の各称号と認定アクターの相互関係についての聞き取り調査する。あわせて人材育成という観点からの知識・スキルの獲得の具体的な取り組みについて行政、同業者団体の資料収集と実態調査を実施する。 なお、研究打ち合わせの期日等を確実に設定し、共同で調査計画を立て、研究の推進を図る。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、研究計画の遂行に遅れが生じたため、調査の実施に進まなかった。そのためもっとも経費の使用の額が大きかった調査旅費の使用が未消費になったことが、次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、研究の推進計画の見直しを行い、資料・データの収集調査と聴き取り調査を実施する。研究を進める適正な助成金の使用を行う。。
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