2016 Fiscal Year Research-status Report
伝統的技能職者の技術継承における現代的課題:学校教育・行政・同業者団体に着目して
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15K03859
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Research Institution | Tohoku Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
佐藤 直由 東北文化学園大学, 健康社会システム研究科, 教授 (00125569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪股 歳之 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (60436178)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 伝統的技能職者 / 技術継承 / 専門職養成 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、先行研究の検討と収集資料の整理を実施したが、現地調査並びに聞き取り調査を計画通りに実施するには至らなかった。前者では研究論文の収集、新聞記事やWEB上での情報収集、さらに同業者組合の情報誌等の収集を行った。 資料収集の成果として、日本酒造組合中央会が実施した人材育成事業の概要(経営研修、技術研修、後継者育成事業)や「酒造従業員技能検定試験」制度の実施状況についての資料があげられる。また、杜氏の職能団体である南部杜氏組合が昭和30(1965)年から発行している組合情報誌「南部杜氏」の一部も収集した。 情報誌「南部杜氏」120号によると、平成28年7月に開催された夏季酒造講習会には2か所の会場合わせて559人(実人数)が参加している。また、杜氏資格選考試験は18名受験をし、合格4名と報告されている。杜氏資格選考試験は、採点表が公開されており、筆記試験(50点)、きき酒(10点)、面接(30点)、経歴(10点)に配分されている。筆記試験は、酒税法(10点)、醸造学(40点)とされ、専門知識と面接を重視した選考に変化している。近年、女性で酒造業に従事し、杜氏や酒造技能士の資格を取得し杜氏職に就く人材も増えているが、その背景としての酒造工程の機械化、労働形態の変化(常勤)、そして経験より専門知識を重視した杜氏資格選考試験の変化がその一因としてあげられる。 以上のような資料から、酒造業における人材育成システムの変化を仮説として描出可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成28年度は、先行研究の検討と収集資料の整理を実施したが、現地調査並びに聞き取り調査を計画通りに実施するには至らなかった。前者では研究論文の収集、新聞記事やWEB上での情報収集、さらに同業者組合の情報誌等の収集を行い、それらから研究の進展につながる知見を得ることができた。しかし、後者の実地調査、聞き取り調査は、代表者の重責の職務の継続とあわせて代表者の体調不調が年度半ばまで続き、実施する機会を確保できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度、平成28年度の進捗状況に大幅な遅れが生じていることから、調査計画の見直しを行い、平成29年度は以下の研究を遂行する。 (1)具体的な伝統産業として酒造業に焦点を当て、酒蔵で従事している杜氏職に対して、経歴、知識や技術の獲得過程、「わざ」としての酒造りへのこだわり、さらには現代の杜氏職に対する意識等を探る質問紙調査を実施する。 (2)杜氏組合、酒造組合等の同業者団体に対しても技術の継承や従事者の育成等に関する質問紙調査を実施する。特に、杜氏組合や酒造団体が開催している酒造講習会のカリキュラムの変化や自醸酒の鑑評会における評価の重点項目の変化をとらえる質問項目を設定する。また、杜氏資格選考試験における杜氏認定の基準、標準、評価の視点も探ることが可能となるように設計する。 (3)近年実施されている蔵元、小売酒販業者、飲食業者、消費者が参加する「蔵元を囲む会」「○○酒を味わう会」「初しぼり会」といった催しが持つ意義づけを確認する調査を実施する。それは、蔵を代表する杜氏からのわざや技術の伝達、それを媒介する業者の評価、うまみの評価と好みの伝達を行う消費者という3者のトライアングルによって生じる杜氏職の技術の向上や意欲の更新、酒販業者と消費者の酒造への参加意識の拡大、といった相乗効果を検証する作業となる。 (4)研究代表者と共同研究者と定期的な研究会を持ち、調査計画と実施を確実に行い、研究の推進を図る。
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Causes of Carryover |
研究経費として調査旅費に重点を置き、相応の配分を予定していたが、研究代表者の重責の継続と体調の不調により、調査期間の設定が整わず、現地調査、聞き取り調査を実施できなかった。このため調査旅費、謝金の支出がゼロとなった。そして、平成28年度は、最小限必要な資料等の収集のみに限定したため、聞き取り調査に係る記録テープお越し費用(人件費)の執行もなかった。物品費としては必要なものに限定して使用した。これらの理由により、次年度の使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、調査旅費としての執行、聞き取り調査に係る謝金や記録テープお越し費用(人件費)に計画的に使用する。また、同業者団体(酒造組合等)、職能団体(杜氏組合、連合団体等)へのアンケート調査の計画を立て、実施する。アンケート調査は、郵送法により行うため、郵送料、調査票・封筒印刷費、データ入力・処理費用、調査結果報告書作成費用等に適正に使用する。
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