2017 Fiscal Year Research-status Report
伝統的技能職者の技術継承における現代的課題:学校教育・行政・同業者団体に着目して
Project/Area Number |
15K03859
|
Research Institution | Tohoku Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
佐藤 直由 東北文化学園大学, 健康社会システム研究科, 教授 (00125569)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪股 歳之 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (60436178)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 伝統的技能職者 / 技術継承 / 専門職養成 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、全国の杜氏組合に状況調査を実施し、組合会員数、技能継承・向上に関わる事業、現在の課題、組合の特徴などについて回答を依頼した。回答が得られた17組合のうちインタビューに協力を申し出た組合の中から4つの組合を調査対象に選び、実施した。すでに解散をしているNU組合、平成30年度に解散を決定しているMT組合、組合の活発化を図っているA組合、H組合、現状維持にあるI組合である。 調査の結果として、季節雇用から年間雇用への変化はあるものの季節雇用の形態を変えて維持し、技能継承を図る活動を活発に展開している組合は、リーダーシップを発揮する杜氏の存在があげられる。解散した組合、解散を決定した組合は、農業の衰退による季節労働から通年雇用への転換が後継者不足もたらした場合と、逆に冬季農業の実現により通年農業へ移行したことで季節雇用の解消が後継者不足をもたらした場合に分けられた。また、技能継承活動を活発に展開しようとしている組合は、杜氏称号の授与を行っておらず、研修会や品評会を通しての交流に力を入れ、県自治体の連携(技術センターとの連携による技能の向上、酒造業におけるブランド化の推進等)による支援が展開されていた。 前年度までの知見と今年度の調査結果から、杜氏組合の一方での衰退と他方での活発化は、地域における産業の変化や生活基盤の整備の進展等を要因にしつつ、地域産業としての維持発展に係る取り組みの濃淡と密接に関係していることが指摘できる。酒造における技能の継承と人材育成システムの変化は、新たな局面を創りつつあるといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、前年度における研究の遅れを取り戻すため、質問紙調査を踏まえて調査対象組合を的確に設定することできた。また、現地での調査は、多くの時間を費やすことはできなかったが、準備を整えてヒアリングのポイントを絞って実施することができた。今回、調査を実施できた組合は、其々の中心的な組合長も含めて、比較的対照的な位置にある組合だったことも作用し、組合活動や技能継承の取組における差異を把握できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
事業期間延長にあたる本年度は、これまでの調査研究結果を再整理し、得られた知見と研究成果の確認のために補充調査を実施する。その結果を踏まえて、研究論文を作成し、学会での研究報告と学会誌への査読論文としての投稿を行う。
|
Causes of Carryover |
研究成果を明確にするための補充調査と研究成果発表のために補助事業の期間を延長した。次年度使用額は、以下のように計画的に使用する。 補充調査費用100,000円、成果発表旅費100,000円、論文掲載料10,000円、残額は消耗品等に使用する。
|