2015 Fiscal Year Research-status Report
日本と東南アジアの互助ネットワークの民俗社会学的国際比較研究
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15K03860
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Research Institution | Ryutsu Keizai University |
Principal Investigator |
恩田 守雄 流通経済大学, 社会学部, 教授 (00254897)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バヤニハン(相互扶助) / アブロイ(葬儀慣行) / パルワガン(小口金融) |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の目標は日本とフィリピンの互助行為の比較及び互助制度の普遍性と固有性の検討であった。平成27(2015)年8月にはミンダナオ島のダバオを拠点に周辺の自治区(バランガイ)や農村、サマール島の漁村や山村、ルソン島のブラカン州とパンパンガ州の農村で、また28年3月にはルソン島北部のバギオを拠点に周辺の自治区や山村、同島南部のレガスピとピリ周辺の農村、パナイ島のイロイロを拠点に山村とギマラス島の漁村で聞き取り調査を実施した。 その結果前半の調査では日本のユイ、モヤイ、テツダイという伝統的な互助慣行に相当する農作業に伴うスユアンやルソン、共同作業のトゥロンガンやマキパグビスク、冠婚葬祭の手助けであるツゥロングやタバング、また頼母子にあたるパルワガンやブボアイなどの言葉とその行為について知ることができた。後半の調査では同様にアルヨンやタバング、共同作業のマンビビダンやラバス、冠婚葬祭の手助けであるツゥロングやアブロイ、また頼母子に相当するパルワガンなどの言葉とその行為について日本と比較することができた。 互助慣行の言葉はタガログ語やビサヤ語、カンカナエ語やイバロイ語など言語の違いを反映しているが、互酬的行為、再分配的行為、支援(援助)的行為の3分類に分けて互助慣行を捉えることができる。島の山間部では収穫のとき労力提供したグループで私有地の果物を共有地(コモンズ)のように均等に分配する仕組みも見られる。またかつての日本のように共有地として活用するモヤイ島の制度が島嶼国家のフィリピンにもあることを想定していたが、この種の仕組みは聞き取りをした限りなかった。しかし制度としてではなく個人の生活のために無人島を活用することはある。いずれも近代化に伴い互助慣行は衰退しつつあるが、地方の山村や小さな島ではまだ伝統的な支え合いのしきたりが守られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に推移しているが、現地調査は当初の予定どおりできたものの、日本での資料収集が十分ではなかった。次年度以降インドネシアの互助慣行の研究と共に日本との比較研究を進める予定である。今後はフィリピンの互助慣行について論文(本務校紀要『社会学部論叢』への投稿)をまとめる予定である。なお研究成果は当該年度ではなく、次年度の論文掲載となり半年のずれが生じる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の28(2016)年度は日本とインドネシアの互助行為の比較及び互助制度の普遍性と固有性について研究するが、8月と翌年の3月にゴトン・ロヨン(相互扶助)の慣行について現地調査を予定している。その後はヒアリングのまとめと日本での資料の精査を通して、日本とインドネシアの互助制度の比較また相互の影響関係である「社会的移出入」の仮説について検討する。その研究成果は本務校紀要『社会学部論叢』に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
直接費に繰り越しが発生したが、これは当初予定していた現地調査用ノートパソコンのOSバージョンアップ版(Windows10)の購入を予定していたが、現在のもの(Windows8)で十分使用が可能でその支出がなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この分はフィリピンの互助慣行について報告する国内学会出張旅費(日本社会学会)で使用する予定である。
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Research Products
(2 results)