2016 Fiscal Year Research-status Report
「東アジア」村落における生活保障組織の比較社会学:日本とバリ島の事例
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15K03868
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
永野 由紀子 専修大学, 人間科学部, 教授 (30237549)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 農村社会学 / 人類学 / インドネシア / バリ島 / ツーリズム / 村落 / 家族 / 地域社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の中間年の本年度は、研究テーマに関わる統計資料や文献の収集を継続すると同時に、東北地方の農漁村の現地調査とインドネシア・バリ島の農村での現地調査を実施した。その結果、以下のことが明らかにされた。 国内調査より:1.山形県庄内地方の農村の世帯の中で生産組合に加入している農家世帯は一部になっている。2.通勤兼業と水田稲作農業の困難のなかで、後継者がいない世帯が増えている。3.平場農村では、耕作放棄地や空き家が増えているわけではない。農業や農地、農村景観は、集落営農法人等によって維持されている。4.宮城県の離島漁村では、東日本大震災後、震災前からの過疎化と高齢化の傾向に拍車がかかり、漁業従事者が減少した。5.設備投資の大きいノリ養殖業は、「がんばる養殖業」を利用した法人化によって、個別経営が減少した。機械の共同利用にとどまらない生産協業と給与制を導入した法人化は、養殖業を変貌させた。6.海浜清掃やアサリの採取は、地区の全世帯が参加している。 →農業や漁業は存続しても、農家や漁家のあととりによる世代継承は困難になっている。イエが存続することではじめて存続してきたイエ連合としての日本のムラのあり方が大きく変貌している。今後は、イエなきムラの存続がありうるか、イエの解体は同時にムラの解体を意味するかについて考察する必要がある。 海外調査より:1.世界遺産の登録から3年後のインドネシア・バリ島のジャティルイ村では,観光収入の配分をめぐって複数の組織が拮抗していた。2.さらに、土づくりを大事にした「農業のための農業」よりも,水田の景観を観光客に楽しませるための「景観のための農業」を優先するような自然と人間の調和にかかわる深刻な問題もでてきている。3.こうした変化は,ポスト・スハルト期の地方分権化とマス・ツーリズムを批判してでてきた持続可能な観光のあり方と関わっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に関する文献研究や資料収集・資料の整理と分析については、研究計画どおりに進展している。現地調査についても、日本農村および海外調査についても円滑に現地調査が実施されており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の報告書の作成に向けて、不足する文献・資料の収集と分析を継続するとともに、インドネシア・バリ島および日本の農村について補充調査を実施し、調査結果を分析して、特定村落についてのインテンシブな事例研究をまとめる。
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Causes of Carryover |
インドネシア・バリ島と日本の農村で予定していた現地調査が調査対象者の都合で予定より日数が短かくなったために、研究代表者の旅費および謝金に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、本年度のインドネシア・バリ島と日本の農村での現地調査の不足を補うために、当初計画していたよりも長く現地調査を行う必要がある。本年度の残額は、当初予定していた補充調査のための旅費と謝金に加えて、延長した日数分の滞在費と謝金に充当する予定である。
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Research Products
(5 results)