2018 Fiscal Year Annual Research Report
Cultural practice in the lived anarchism: criating aoutonomous space and subsistence
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15K03872
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
澁谷 望 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (30277800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田原 琳 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (70466910)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コモンズ / 本源的蓄積 / サブシステンス / アウトノミア / 社会運動 / アナーキズム |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度であり、フォローアップ調査と研究の総括を行った。 理論的研究として、保守的なコモンズ解釈との、コモンズの記憶をめぐるせめぎ合いに焦点を合わせた。アンジェリスおよびフェデリーチのコモンズ/サブシステンスの維持・創出に関する議論を参照することにより明らかになったのは、都市コモンズの実践が一方で、資本および国家の支配からの自律性を獲得する方向で組織化されうるとともに、他方で、資本および国家の活動の下支えをすることもあるという点であった。この視座から、本年度は、両者の性質を画するメルクマールを、文化実践、とりわけ、「ケア倫理」の有無を重要なメルクマールとしてアプローチした。 フォローアップ調査としては、オーストラリアのアウトノミア系社会運動のケーススタディとして、ウーロンゴンにおける「ラブ・フェスティバル」の実践についての調査を行った。工業都市として労働運動の歴史を持ち、大学都市であるウーロンゴンにおいて、アウトノミア系社会運動のアクティビストが中心となって、普段はあまり接点がないこの地域の社会運動の様々な流れ(労働運動系、エコロジー系など)の人びとを集め、議論をするイベント(「ラヴ・フェスティバル」)を組織した。オーガナイザーにとって、ベル・フックスやジョシュア・インウッドが論じる、ブラック・コミュニティにおける抵抗の実践に「愛」がどれほど重要であったという問題提起が出発点であったという。 これらの調査と理論構築の総括として、2月に東京外語大学にて、シンポジウム「政治としての愛」を開催し、「愛」と「ケア」の概念の政治的含意の可能性を再検討した。政治における「愛の喪失」そのものが、「メランコリー」という政治的な含意をはらんでいること、それが「悲しみに基づく戦闘性sad militancy」を媒介にある種のマスキュリニティの維持の危険をはらむことが確認された。
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