2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K03876
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
鈴木 玲 法政大学, 大原社会問題研究所, 教授 (20318611)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 労働運動 / 社会運動 / 公害 / 水俣病 / 住民運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、アメリカの労働運動の環境問題への取り組みの事例研究として、OCAW(石油、化学、原子力産業の産業別組合)のローカル3-631の取り組みについて、資料調査を行った。具体的には、同ローカルが組織されたMAPCO社デルタ製油所があったテネシー州メンフィスの地元紙(Commercial Appeal紙の1980年代のバックナンバーのマイクロフィルム)をメンフィス大学図書館で閲覧し、環境問題に関する記事を収集した。地元紙の閲覧から、これまで知りえた情報以上のもとを得ることができなかったものの、デルタ製油所近辺の公害がメンフィス地域のいくつかある環境汚染問題の一つであることがわかった。また、80年代前半に環境問題に取り組んだNGOへの聞き取り・資料収集を試みたが、問い合わせに対しNGOから返事を得ることができなかった。 アメリカ労働運動の環境問題への取り組みにかんする先行研究から得た知見を論文「アメリカの労働の環境問題への取り組み、環境運動との連携」にまとめ、『大原社会問題研究所雑誌』2018年3月号で刊行した。同論文は、労働組合の環境問題への取り組みの目的や形態が労使関係制度の在り方に影響を受けたことを指摘した。 日本の労働組合の環境問題への取り組みについては、化学産業を組織した合化労連と製紙産業を組織した紙パ労連が70年代に公害問題に具体的にどのように取り組んだのか、傘下の企業別組合が自らの職場環境や近隣地区の環境汚染・住民運動にどのような対応をしたのかについて調べた。調査は、それぞれの産業別組合の機関紙、刊行物、大会資料に基づいた。また、企業レベルの具体例としてこれまで検討してきた新日窒労組の水俣病への取り組みについてを研究を継続し、熊本学園大学水俣学研究センターが主催する「チッソ労働運動史研究会」に参加した(10月6日、12月26日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アメリカの労働組合の環境問題への取り組みの具体的事例としてOCAWローカル3-631の取り組みについて、より詳細な調査を試みたが、メンフィスの現地調査で得られた情報が限られた。そのため、別の事例を対象とすべきなのか、現時点で入手できた資料に基づいて検討している。日本の労働組合の環境問題への取り組みについては、当初、新日窒労組の水俣病への取り組みの事例を、四日市公害への労働運動(とくに自治労)の取り組みと比較しようとしたが、四日市公害の資料アーカイブズの閲覧が難しいことがわかった。そのため、化学産業や製紙産業など公害発生産業の労働組合を中心として労働運動の公害への取り組み全般から新日窒労組の事例を位置づける視点に方向転換した。
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Strategy for Future Research Activity |
アメリカの労働組合の環境問題への取り組みについては、できるだけ具体例を探す。ニュージャージー州で大きな公害事件を起こしたCiba-Geigy社の工場を組織したOCAWローカル8-562についてアーカイブズ等が存在しないか調査を行う。日本の労働組合の公害問題への取り組みについては、引き続き収集を続けている資料の分析を行うとともに、新日窒労組元組合員に、他の組合との交流などについて聞き取りを行う。
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Causes of Carryover |
理由:アメリカでの追加調査が行えなかったため。熊本学園大学水俣学研究センター主催のチッソ労働運動史研究会が4回開催されたがそのうち2回しか出席できなかったため。
使用計画:アメリカの追加アーカイブス調査(OCAW ローカル8-562に関する資料)および、水俣学研究センターでの元組合員の聞き取り。
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Research Products
(1 results)