2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03887
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Research Institution | Toyo Eiwa University |
Principal Investigator |
石井 香世子 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 准教授 (50367679)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ジェンダー役割 / タイ / 日本 / 東南アジア / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、① 先行研究のとりまとめと理論的枠組みの構築、②すでに実施済みのアンケート調査の統計分析の精査、③ プレ・インタビュー調査の実施、の3つを行った。 先行研究については、アメリカの社会学系学術誌を中心に、ジェンダー役割期待の比較研究に関する論文をレビューした。とくに家事労働の分担に関する研究、異文化間の比較研究に関する先行研究に焦点を当てて、手法と理論の両面から参考となる事例を求め、本研究の基本的視座を構築した。またアンケート調査の統計分析に関しては、すでに完了していた基礎分析をもとに、本研究の焦点となる項目ごとに関連する複数の分析視座からの、重回帰分析を試みた。インタビューについては、まず日本人の調査対象者にプレ調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、(すでに実施・一時分析済みの)アンケート調査から得られた見解を補足するための、インタビュー実施を予定していた。それを通じ、日本・タイ双方において、「家事の外注」「メイドの活用」「隣人・家族の家事分担」の3項目に関して、どのような意識と利用実態の違いがあるかを分析することを目標としていた。 ところが実際にプレ・インタビューを実施してみると、新たな手法上の問題に直面した。つまりインタビューでもアンケートと同様に利用実態に関しては「グレーゾーン」が大きく、回答の背景を読み解く過程なくしては、目指す分析が難しいという問題に新たに直面することとなった。 ただしインタビューを実施したことにより、議論は深まったといえる。タイと日本で、女性が家庭内ジェンダー役割を担うとき、実質的にかかる時間や労力には違いがあっても、主観的なジェンダー役割“期待”(と負担感)の構造そのものには、差異がないのではないかという新たな仮説が加わった。 いまだ3年計画の初年度終了時点であり、今回の調査手法と理論枠組みの修正に関しては、次年度以降の集中的な作業によって十分に当初目標に到達可能だと考えられる。理論的により精度の高いものとできる可能性が強まった点において、初年度の試行錯誤は全体的にはむしろプラスの効果が高かったといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得た反省点と議論の再構成をもとに、2年目は試験的な意味も含め、調査手法・調査対象と前提とする理論面において、以下のとおりの発展的な修正を図って研究を進めていきたい。 まず調査手法としては、従来予定していたものより長期的な参与観察を含めた手法へと転換を図る。また調査対象は、これまでのアンケートとプレ調査をもとに、もともと日本で社会化されながら“タイの家庭”でジェンダー役割を担う女性と、もともとタイで社会化されながら“日本の家庭”でジェンダー役割を担う女性、もしくはその両者のあいだを行ったり来たりする女性に絞ることとする。これにより2つの文化の比較を明確な形で認識し、比較する視点からのインプットが期待できると思われる。ただし、敢えて「日本からみたタイ」「タイから見た日本」と両者を同じ重みで分析対象とすることで、比較分析の有効性を高めたい。 さらに理論的な側面としては、女性移民・家族移民に関する先行研究を新たにレビューし、調査対象が若干シフトしたことを有効に活かせるような、論文全体の理論構成を目指すものとする。
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Causes of Carryover |
本来、タイと日本の双方ででインタビュー調査をする予定であったが、日本で(日本人および在日タイ人に対して)行ったプレ調査で、調査計画を再考する必要性が出てきた。このため本年度は、先行研究のレビューや関連研究者との意見交換を重点的に行い、タイでの調査は次年度に先送りとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、今年度に組み直した理論枠組みに従って、前半に日本でのインタビュー調査を、また後半にタイでのインタビュー調査を実施する予定である。初年度にタイで調査を行わなかった分、次年度のタイでの調査は応募時に想定したよりも長期間にわたることになる計画であり、繰越金をここに充てることが計画されている。
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