2017 Fiscal Year Research-status Report
首都圏から避難した原発ディアスポラの生活リスク意識と家族関係の変容に関する研究
Project/Area Number |
15K03906
|
Research Institution | Fukuoka Women's Junior College |
Principal Investigator |
加藤 朋江 福岡女子短期大学, その他部局等, 准教授 (90296369)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 原発避難 / 首都圏 / 福島原発 / 子育て / 家族 / ディアスポラ / 社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
実施した研究の具体的な内容は以下の通りである。(1)生協総合研究所との「放射性物質に対する意識や行動の調査」(Webによる質問紙調査)の実査と分析、および結果の公表、(2)首都圏から福岡県に避難した世帯を支援する団体への聞き取りとイベントへの参与観察、(3)新聞縮刷版・新聞記事データベースにおける「チェルノブイリ原発事故」関連の記事の蒐集と分析、および結果の公表、である。 (1)については、研究員の近本聡子氏と共同で生協組合員を対象として「福島第一原子力発電所の事故以後の食品の安全性についての意識」「国・自治体・生協等の放射性物質に対する対応への評価・不安感」「情報の入手行動」を中心に実施、インターネットモニター対象者の7,453人から回答を集めることができた(有効回収率44.9%)。結果として、住んでいる自治体や国の放射性物質に対する取り組みについて、2割程度しか満足していないこと、生鮮食品や加工食品の放射線量について不安な層が半数以上であること等が明らかになった。この調査結果の第一報は『生活協同組合研究』の2018年3月号に掲載することができた。 (2)については、「つなぎte大牟田」や「ウォローズ九州」「ふくおか市民ネットワーク」といった原発避難者の支援団体のイベントに参加、参与観察をおこなった。また、それぞれの団体で活動しているメンバーや代表者への聞き取りを実施した。原発事故から年数が経過するつれ一般市民においては事故が起こったことそれ自体の記憶が薄れつつあり、とりわけ九州ではそうであることがどの団体からも指摘された。 (3)については、毎日新聞および西日本新聞の縮刷版とWebで提供されているデータベースより「チェルノブイリ原発事故」関連の記事を蒐集し、1986年・1996年・2011年という時期区分による比較検証をおこなった。この分析結果は第90回日本社会学会大会で報告することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に予定していた生協総合研究所との「放射性物質に対する意識や行動の調査」(Webによる質問紙調査)」が実施できたため。本調査の集計目標は2,000ケースであったが、それをはるかに上回る7,453ケースもの回答を得ることができた。それだけ、ボリュームがありより精緻な分析をするに値する情報であるため、今年度もこのデータから得るものが大きいと考えられる。本調査については生協総研の雑誌で結果を公表することもできている。 また、新聞記事のデータベースによる「チェルノブイリ原発事故」報道の分析についても、いくつかの研究会や学会で報告を実施することができた。この作業については本年度も継続していく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は以下の作業を中心に研究を推進する。 (1)昨年度生協総合研究所と共同で実施した「放射性物質に対する意識や行動の調査」の結果について、さらなる分析と公表をすすめる。既に第二報については構想が固まっており、『生活協同組合研究』への掲載が見込まれる。 (2)「チェルノブイリ原発事故」および「福島第一原発の事故」について、新聞記事データベースによる記事を更に蒐集し、こちらも分析結果の公表をおこなう。 (3)避難者や避難者の支援団体への聞き取りを継続し、原発事故から年月が経つことによる苦労や課題を抽出する。 (4)本年度が最終年度であるため、これまで実施した分析結果や聞き取り調査の内容などを中心に報告書の形式にまとめる。
|
Causes of Carryover |
昨年度実施した生協総合研究所との質問紙調査にかかる経費が当初の予算よりも低かったため。また、東京の担当者との打ち合わせのいくつかをSkype等を利用したやり取りで実施できたため、出張費が当初の装丁よりもかからなかった。今年度は結果の公表のために学会報告を実施したり、報告書の印刷や論文投稿のための費用として活用したい。
|
Research Products
(2 results)