2015 Fiscal Year Research-status Report
社会保障政策に対する通商政策の規定的影響に関する国際比較研究
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15K03910
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
松永 友有 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 教授 (50334082)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イギリス / 通商政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年10月17日に福島大学で開催された政治経済学・経済史学会秋季学術大会において、「イギリス帝国特恵関税同盟構想の変遷」という題目のパネル報告をおこなった。 本パネル報告においては、科学研究費研究テーマである「社会保障政策に対する通商政策の規定的影響に関する国際比較研究」の一環として、イギリスの通商政策の歴史的展開を解明すべく、19世紀末期以降のイギリスにおいて提起され、最終的に1932年のオタワ協定によって実現を見るに至ったイギリス帝国特恵関税同盟をめぐる論争について、新たな視点から照射を試みた。 すなわち、イギリス帝国特恵関税同盟の構想は、1880年代に展開された公正貿易運動を嚆矢として、1903年に保守党の有力政治家ジョゼフ・チェンバレンによって選挙公約とされることにより大規模な全国運動となったものの総選挙敗北によりいったんは挫折し、チェンバレンの次男であるネヴェル・チェンバレン蔵相の下で1930年代に実現を見ることとなった。従来の研究は、この一連の運動、および政策を連続的な帝国主義構想として捉える傾向があったといえるが、本報告は、イギリスのナショナル・インタレストを一方的に打ち出した公正貿易運動から、むしろ自治領利害をイギリス本国利害以上に意識したジョゼフ・チェンバレンの構想、最終的に本国のナショナル・インタレスト重視に回帰した1930年代のオタワ・システムへと、外形的な連続性の背後で重要な変遷が生じていたことを明らかにした。 以上の学会報告に結実した研究は、通商政策の側面から、本科学研究費研究課題に資する成果といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「社会保障政策に対する通商政策の規定的影響に関する国際比較研究」という本研究課題は、欧米諸国全体を対象とするものであるが、その中でも鍵を握るイギリスに関して、その通商政策の性質を解明することにより、その社会保障政策との関係を今後さらに具体的に究明していくための有力な手がかりを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
「社会保障政策に対する通商政策の規定的影響に関する国際比較研究」という本研究課題を進めていくにあたって、自由貿易国の代表として位置づけられるイギリスに対して、高度保護主義国の代表であるアメリカ合衆国、およびオーストラレーシア諸国、特にオーストラリアは、比較研究の焦点としての位置づけをなしている。今年度は、アメリカ合衆国に渡航して史料調査をおこない、アメリカにおける通商政策と社会保障政策との関連性について具体的な手がかりを得る作業を進めることを予定している。
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Causes of Carryover |
本科学研究費により年度内に支出を予定していた長期海外出張を、校務などの関係で見送り、次年度に支出することとした。そのため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
校務などの関係で、第一年次は本科学研究費による支出を見送った長期海外出張をおこない、アメリカ合衆国において史料収集などの研究調査をおこなう予定である。
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Research Products
(2 results)