2018 Fiscal Year Annual Research Report
A Comparative Study about the Influence of Trade Policy Regimes on Western Countries' Welfare Policies
Project/Area Number |
15K03910
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
松永 友有 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (50334082)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会保障政策 / 通商政策 / 国際金本位制 / イギリス / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
学会員1000人以上を擁する社会政策学会の機関誌『社会政策』第10巻第1号(2018年6月)において、査読の手続きを経て、単著論文「草創期の社会保障政策に対する通商政策の規定的影響―第一次大戦前の西洋諸国を対象とする国際比較研究」を発表した。この論文においては、第一次大戦前の時期に関して、イギリス、オランダ、スイス、ノルウェーのような自由貿易国と、ドイツ、フランス、オーストリア、ロシア、およびアメリカ合衆国のような保護貿易国との間の比較考察を行い、その結果として、次のような知見を得た。すなわち、厳しい国際競争圧力にさらされている自由貿易国は、保護貿易国よりも社会政策の着手が総じて遅れる傾向にあり、また社会政策に実際に着手する場合には、雇用主の負担軽減を図るべく、公費負担比率が高く雇用主負担比率が低いそれを策定する傾向にあった。他方で、保護貿易国の場合、雇用主負担比率が高い社会政策を策定する自由度をより高く有していた。他方で、同時代には連邦政府レベルでなく、州政府レベルで社会政策が実施されていた高度保護貿易国アメリカ合衆国では、州際通商に及ぼすコスト面での悪影響への懸念が、自由貿易国と同様に社会政策への制約となっていた。 次いで、竹内真人編著『ブリティッシュ・ワールド』の第5章「帝国特恵関税同盟構想の理想と現実」を執筆し、本共著は日本経済評論社から2019年3月に刊行された。この論説においては、19世紀末期から1930年代に至るイギリスの通商政策論争の特質を各種の一次史料に基づいて分析した。通商政策が社会政策におよぼす規定的影響を析出しようとする本研究課題に資する研究成果である。
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