2015 Fiscal Year Research-status Report
地域社会における生活困窮者の「自立生活支援」の具体的方法に関する研究
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15K03919
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
衣笠 一茂 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (50321279)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コミュニティエンパワメント / 生活課題実態調査 / バイオサイコソーシャルモデル / 地域アセスメント / 生活困窮者 / 地域支援 / 生活の包括的支援 / 社会関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年においては、大分県下13市町村におけるフィールドワークとデータ収集を行うために、大分県福祉保健部地域福祉推進室の協力の下、大分県下13市町村における「生活課題実態調査」を実施し、現在そのデータの分析を進めている最中である。 この調査は、「バイオ・サイコ・ソーシャルモデル」の考え方に基づき、「心身的健康」「経済状態」「社会関係」の三つの側面から生活ニーズを捉えようとするものであり、把握されたニーズを性別、年齢階層別、所得階層別、世帯構成別などのクロス集計を駆けてゆくことによって、「どんな属性の人々が、地域において度のようなニーズを有しているのか」をアセスメントできる設計となっている。すなわち、平成27年度においては、これからの「コミュニティ・エンパワメント・スキーム」を展開してゆくための基礎的な「地域アセスメント」を行い、これからの計画立案、計画の実行に向けた基礎的なデータの収集を行うことができたと考えている。 参考までに、本研究の実施に向けて協力の得られた13市町村に対して、無作為に抽出された6,000人のサンプルに対して郵送による配票調査を実施し、回収されたのは2849通であり、回収率は46%である。現在、回収されたアンケートをもとに、データ入力を(株)OECに委託して行っており、4月中旬にデータ入力が修了した後、データの分析、即ち地域アセスメントの作業にかかることを予定している。その後、地域における生活困窮者のニーズを明らかにし、その支援の方法に向けた具体的な方策を建てる「地域プランニング」へと進むことを想定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画は「地域アセスメント」であり、その実施に向けて概ね順調に研究は推移していると考えている。大分県下18市町村中13の市町村の協力を得ることができ、生活困窮者の「就労支援」だけではなく「生活の包括的な支援」に向けては、地域全体の協力と地域力の発掘が不可欠である。平成27年度に行った「地域アセスメント」では、これら地域の生活課題とともに、地域の持つ潜在的な能力、可能性をアセスメントすることも可能になっており、この「地域アセスメント」を実行し得たことにより、平成28年度以降の研究計画を順調に展開することが可能になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に行った「地域アセスメント」の結果を基にして、平成28年度には県下13の市町村を調査隊長フィールドとして実際に地域に出向き、「生活困窮者を置き去りにしない」地位づくりの実際に向けたアクションリサーチを展開したいと考えている。 具体的には、13の市町村の行政及び社会福祉協議会と連携しつつ、各市町村においてターゲットとなる地域を設定し、その地域における「地域力の開発・発掘」にむけたコミュニティ・エンパワメント・スキームを展開する。「地域アセスメント」によって得られた情報に基づいて、「生活困窮者を置き去りにしない地域づくり」に向けた地域開発計画の計画立案を、住民参加型のボトムアップの方法を用いて展開する。そのことによって、生活困窮者が地域で生活する課題を浮き彫りにするとともに、彼らと地域社会との「マッチング」を図るための地域住民の主体的なとりくみのあり方について、アクションリサーチの手法を用いて方法論の開発を行う。
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Causes of Carryover |
「地域アセスメント」の展開において、県下の13市町村及び県庁福祉保健部への謝金を想定していたが、行政機関が全面的に協力の下謝金を辞退されたため、予算に残額が生じた。また、データの入力についても申請者自身がフォーマットを作成の上最小限のデータ入力委託業務を外注したため、当初見積もった外注予算よりも大幅に経費が節減できた。そのため、今年度の残額が生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降、アクションリサーチを展開してゆく上で、質的なデータの収集に向けて参与観察データ保存用機器(ビデオカメラ、保存用ソフト)の確保、またMaxQDA及びテキストマイニングソフトの購入により、質的データの分析体制を整えることを予定している。また、質的データと同時に定量的なデータを取り扱う必要も出てくるため、アンケート調査の実施に伴う新たなデータ入力の外部入力費に充当したいと考えている。
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