2017 Fiscal Year Research-status Report
地域における就業困難者に対する「就労支援」の意義と役割に関する調査研究
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15K03920
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
阿部 誠 大分大学, 経済学部, 教授 (80159441)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 就労支援 / 若者 / 就業困難者 / NPO / コミュニケーション / 中間就労 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は若者の就労支援を中間就労と位置づけ、特色ある活動を進めているNPO法人Zを中心に事例の収集やスタッフの聞き取りなどを通じて就労支援の困難さや課題について調査した。 NPO法人Zは、若者を対象にした多様で一貫した支援に取り組んでおり、就労支援では、企業の協力を得てNPOが業務を請け負い、就業の困難な若者たちの働く機会をつくることで彼らが自立して働けるようになることをめざしている。この就労支援は①非雇用の外部型である、②必ずお金を伴う、③若年者に特化している、④ジョブトレーナーが必ず同行することを特徴としている。 この仕組みでは、就労支援を受ける登録生3名と支援スタッフであるジョブトレーナー1名がチームをつくって作業をしている。就労支援は段階的に進められ、まず登録までに説明会、相談、現場見学などがある。次に中間就労として現場に出て就労を経験する。そして一定の経験を身につけ、自分で仕事ができるようになると出口として一般就労に至るのであるが、各段階には大きな距離があり、一般就労につながるには困難が多い。また、中間就労にも就労体験、職場体験、就労支援という段階がある。就労体験は自分のペースで一人でやるのにたいし、職場体験では自ら会社に行くためコミュニケーションが求められる。第三段階の就労支援では一定の責任がある仕事を行う。しかし、中間就労で仕事ができても就職につながらない人は多い。ジョブトレーナーは、「仕事」と「作業」とは違う。作業は自分のペースで行えばいいが、仕事となると責任が生じ、全体的な仕事の進捗をみわたして仕事をする必要があると語っている。 就労支援では技能、知識などよりも、まず体力や意欲を高めることが重要であり、またコミュニケーションなど社会的な対応力の修得も重要であるが、これが困難な人が多いところに難しさがある。就労支援ではそうした点を意識的に追求する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今日、就労支援に取り組むNPO、自治体などは数多く、それぞれが特徴をもった取り組みを進めている。本調査研究では、それらの取り組みについて、できるだけ多くの聞き取り調査を行いたいと考えている。また、本研究では、就労支援団体の聞き取りだけではなく、支援スタッフへの個別の聞き取りも行っており、できるだけ多くのスタッフに聞き取りを行うには時間を要する。聞き取り調査は一定程度進めているが、十分な情報が収集できているとはいえない。その点で研究はやや遅れている。 研究の充実のためには、就労支援を実際に行っている団体への追加の聞き取り調査が必要であり、聞き取り調査の対象を拡大しつつ、さらに調査を継続し、就労支援の方法や問題点など詳細を把握したいと考えている。あわせて、調査結果の整理・分析も進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、就労支援を行っているNPOや地方自治体などへの聞き取り調査を進めてきた。そのなかで、就労支援の理念や方法とともに、就労支援の具体的な事例を聞き取り、就労支援で必要な点がどこにあるのか、また、就労支援の問題点や今後の課題などについて整理してきた。とくに本調査研究では、組織への聞き取りと同時に、支援スタッフへの個別の聞き取りを行うことを特徴としており、スタッフへの聞き取りを通じて、就労支援の具体的な事例や困難さなども把握できた。 しかし、就労支援に取り組む団体は多様であり、そこでの実践もざまざまであって、特色ある活動を進めているところも少なくない。そこで今後は、さらに就労支援に取り組んでいる、別のNPOのスタッフをとりあげて、その活動や支援の実績、また課題等について聞き取りを行うとともに、とくに支援スタッフへの聞き取りを再度行い、就労支援の具体的な事例、そこでのスタッフが実際に果たす役割等、具体的な支援内容について詳細な点を調査する。また、一般就労に結びついた事例も収集し、そこで就労支援の果たした役割などについても聞き取る。これら聞き取り調査にもとづいて、就労支援の取り組みについてパターンや特徴を整理したうえで、就労支援事業の課題についてまとめる。
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Causes of Carryover |
調査回数が当初予定より少なかったため、旅費や謝金への支出が少なくなった。また、調査研究の整理・分析が不十分のため、学会等での報告を控えた。このため当初予定していた旅費等が未使用となった。 しかし、反面では、今後追加的な調査や研究発表の機会が必要となった。次年度は、追加の調査やその結果の整理・分析を行うとともに、学会等での研究発表をしたいと考えており、残額は、主としてそのための旅費や謝金に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)