2017 Fiscal Year Research-status Report
地域包括ケア時代のソーシャルケア発信型IPWに好循環を生む生活支援記録法実証研究
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15K03926
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
嶌末 憲子 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (80325993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小嶋 章吾 国際医療福祉大学, 医療福祉学部, 教授 (90317644)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生活支援記録法 / F-SOAIP / 経過記録 / 実践過程の可視化 / ICT / 多職種連携 / IPW / 地域包括ケア |
Outline of Annual Research Achievements |
介護老人保健施設(以下、老健)におけるアクションリサーチでは、介入群の試行に留まらず全面導入し、キーパーソンである介護福祉士と看護師による導入研修支援として、生活支援記録法のガイド(ダイジェスト版)を提示した。確認できた新たな効果には「F」にSOAPの問題リストを包含できること、診察時に医師や看護師が介護職の記録を活用しやすいこと、介護職員初任者も先輩職員の記録から学び書けること、家族への説明にも利用できること等が挙げられた。3回のキーパーソンへのインタビューデータから、介入群の多職種による効果的なリフレクションにより、生活支援記録法が有用であった場面を抽出・共有することを提案した。また、キーパーソンの一人(介護福祉士)は、実践報告や学会発表、全国版の専門職雑誌インタビュー等、人材育成や普及に向けた経験実績を得て、さらに講師としてのキャリアアップが期待できる。 なお、計画以上に進展している生活支援記録法の普及やICT化のうち、本記録法を搭載したKCiS(Kyomation Care interface System:認知症高齢者研究所)が、総務省IoTサービス創出支援事業に採択され、BPSDの減少や記録時間削減等の効果が確認でき、未来投資会議構造改革徹底推進会合「健康・医療・介護」資料「データ利活用基盤の構築等」(厚生労働省、総務省、文部科学省、経済産業省)に紹介された。 介護支援専門員を中心とした地域レベルでの主体的な学習・研修活動の他、大学病院や障害領域、自治体による包括的支援体制や医療と介護連携研修、県レベルでの団体での研修の企画・実施へと進展した。以上の結果より、IPWにおける生活支援記録法のミクロ・メゾ・マクロレベルでの効果は、多職種共通課程や経過記録の標準化に資する。また、訪問リハビリや医療ソーシャルワーカー、介護支援専門員による実践研究の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
①老健での介入研究:前述のように全面導入に向けた研修では、キーパーソンのみで実施し、その成果を発表した。また、医師も含めたIPWにおける効果や、家族や介護職初心者であっても、本記録法の理解が容易であることを確認できた。 ②教材作成について:専門雑誌への寄稿の他、書籍を刊行予定である。また、電子教材を「生活支援記録法」のHP http://seikatsu.care/ にて公開した。『月刊ケアマネジメント』では本記録法が特集された。 ③普及・ICT化について:前述のKCiSの他、大学病院のMSWが電子カルテにおける活用をしている。また、県レベルでの医療福祉生協では、ICT化後に本記録法を導入することを決め、一部活用が始めている。自治体レベルでの研修の内、地域包括ケアシステムで注目されている埼玉県の幸手市では、医療圏域でのシステムを導入していることから、生活支援記録法がヘルスから介護まで活用されうる可能性を有している。さらに、医療と介護の連携や共生社会のモデル事業に着手してきた栃木市では、包括的支援体制構築に向けて市主催の生活支援記録法研修を実施した。今後はICT化を予定しているため、その展開に期待したい。 ④海外への発信について:KCiSは中国でも展開されているため、生活支援記録法を既に海外発信できていると言える。また、生活支援記録法の普及・人材育成の一環として開催した研修では、外国人介護士の定着を研究テーマとしている留学生も参加し、介護現場における叙述記録では理解が難しいが、本記録法により介護を理解しやすくなるといった意見を得た。また、EPA参加者は母国でSOAPを学んでいることも多く、本記録法への親和性が高いといった見解も示唆された。 ⑤特許について:生活支援記録法が搭載されているKCiSは、生活支援記録法によるデータ収集・分析により適切なケアを導出するAI化の特許を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
①老健での介入研究:導入プロセスのリフレクションを行うと同時に、質問紙調査結果についても提示し、評価項目の見直しも進めていく。他法人や自治体での導入時に、IPWのコンピテンシー評価項目の提供が求められていることから、統計的分析を専門とする研究者の協力を得たい。 ②教材作成について:介護支援専門員向けの書籍について、IPWにおけるリフレクション等を追加しまとめる。共同研究者が編者として刊行予定の『ソーシャルワーク記録』(第2版、誠信書房)では、複数領域において、生活支援記録法による事例が所収予定である。前述の生活支援記録法のHPでは、介護職の初心者が関心を持てるよう、本記録法の理論的基盤である生活場面面接の場合と同様、4コマ漫画を掲載予定である。 ③普及・人材育成について:本記録法の受講者より要請された経過記録における標準化の実現には、生活支援記録法の実践報告者が、経験を重ねて講師として研修を担当できることが望まれる。よって、栃木県での県レベルでのソーシャルケア団体協働による研修開催を試行し、他県にも波及できるよう努めたい。 ④ICT化:KCiSについては、2018年度は2017年度の高知市での取組を横展開できるよう他外部資金の獲得を目指す。そこでの生活支援記録法の研修方法や教材は、当科研費での成果の一部と位置づけられる。本記録法導入先におけるIT化の課題について集約し、次年度以降の科研費申請にて対応したい。
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Causes of Carryover |
研究分担者が他の用務と重なり、学内研究費を旅費として使用したためである。
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Remarks |
生活支援記録法の普及を目的として作成し、教材や研修状況を順次掲載予定である。今後は、生活支援記録法講師の人材育成や、導入機関・地域との相互交流、生活支援記録法を研究テーマとする実践者への支援としても活用したい。
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Research Products
(7 results)