2016 Fiscal Year Research-status Report
母子家庭自立支援における多様な「大人モデル」提示プログラムの試み
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15K03935
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
田中 聡子 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (30582382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 典樹 神戸親和女子大学, その他の研究科, 教授 (70584465)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 母子家庭 / 子どもの居場所事業 / 学習支援 / 大人モデル / 子どもの貧困 / 養育支援 / 自立支援プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は母親以外の大人が子どもの自立支援や母親支援にとって有効に機能する、社会生活自立支援プログラムとしての「大人モデル」プログラムを提示することである。これまでの 母親へのヒアリングでは母子家庭の自立支援策は以下の課題があると考える。1点目は、母子家庭の母親が働く目的は子どもの健全育成のためであり、まずは子どもの成長と自立を期待している。子どものためと無理をして働いた結果、子育て時間が確保できず、母も子もストレスフルな状況をもたらしている。2点目は、特に親族と同居していない母子家庭内の大人は、母親だけであり、閉じられた狭い関係性は、子どもの遠慮や我慢を生み出す。子どもの可能性及び選択肢が狭められ、自己肯定感が低くなり、深刻な場合は、学力低下や進学意欲の低下、親子関係の悪化などの問題が起こっている。そこで、居場所事業に参加する母親へのヒアリングでは、母子家庭の生活は子育てよりも生計を担うことが中心になっている。そこで、子どもの居場所事業は、子どもとじっくり関わる機会、母子家庭では提供できない体験、父性を補う機会の確保など家庭の補完的機能を果たすことが期待されていることが明示された。また、子どもの居場所事業は、地域の様々な機関や人が参加し、子どもにとって、異世代交流と大人モデルを知ることができること、子どもを中心にコミュニティが広がることや母親にとっても他者と共感し、つながりができることから地域社会において孤立しがちな母子に対する社会的包摂の可能性を持っていると考える。課題は、生活困窮する母子家庭が子どもの居場所事業からもこぼれていくことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は当初の計画以上に進展している。まず、質的調査については、居場所事業へ参加し、参与観察と母親へのインタビューは既に終了した。この調査結果については日本地域福祉学会の全国大会にて報告した。また報告内容について議論となった箇所や助言を受けて、日本地域福祉学科の学会誌「日本の地域福祉」に投稿し、採択の結果を得た。 同時に計画した量的調査についても、所属大学の倫理審査を受審し、母子寡婦福祉関係団体に協力依頼を行い、現在質問用紙を配布している。また、同じ調査を別の県でも実施することが可能になり、こらから調査票を配布することになっている。これについては、インタビュー時に母親からのアドバイスおよび、質的調査の結果からの「父親の役割」「子どもにとっての母親以外の大人」であり親である父親に対してどのように、離婚の経過や現在の父親の状況が説明されているのか、子どもは父親をどのように理解しているのかというあらたな課題が発見された。そこで今後の研究課題として、調査項目に含めた内容となっている。調査票の回収後に分析し、次の研究につなげていきたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は概ね順調に進行している。今年度は量的調査の回収と分析を行い、また昨年度の結果の学会報告を行う。既に、1年目に実施た量的調査と昨年から今年度にかけて実施している量的調査を比較しつつ、母子家庭の子どもの生活実態を明らかにする。その上で子どもの居場所がなぜ重要で、また居場所の構成要素に「多様な大人」が関与することの意義や子どもの成長にとっての必要性について考察していく。最終的には、全国で展開されている子どもの居場所事業における効果的な自立支援プログラムとなるように、冊子にして公表する予定である。
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Causes of Carryover |
量的調査の分析費用が2016年度ではなく、2017年度になったため今年度の予算執行となった。その理由は、調査準備は順調であったが、項目において先に実施した質的調査から得られた新たな知見として「父性を補う機能」についての検討が必要と判断し、新たに調査項目に加えたことにより、倫理審査を申請し受審結果が1ヶ月近く予定より遅かったため、データ入力や回収費用を2017年請求に繰り越したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
量的調査は既に配布しているため、今後は回収費用およびデータ入力費用が発生する。また、あらたに追加的な量的調査について既に配布準備中であり、配布、回収、データ入力費用が発生する。最終年度のため、投稿済みの論文を発展するためのインタビュー調査を追加で行い、最終まとめにつなげていく。量的調査の発表のため学会報告や母子福祉団体にて結果公表を行うための旅費が必要となる。最終的には母子家庭自立支援プログラムとすての要冊子を作成するため印刷費を計上する。
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