2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03942
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
木下 武徳 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (20382468)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生活保護 / アメリカ / 審査請求 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績としては、まず、審査請求の対応をした経験のある元行政担当者から審査請求事務の実務についてインタビュー調査をした。また、アメリカの現地調査では政府の助成金を利用しないで生活困窮者の法的支援をしている団体やNY市立大学のViki Lens教授等を訪問し、アメリカの審査請求の実情を伺うことができた。 さらに、アメリカの1996年の福祉改革法等で権利制約が最も鮮明に制約されたのは移民の貧困者であることを明らかにした(「アメリカにおける移民増加と生活困窮者支援策」『貧困研究』貧困研究会、no.17、明石書店、pp.62-71、2016年12月)。次に、アメリカの公的扶助の審査請求の仕組みについて、日本と対比をしながらその特徴や課題について明らかにした(「アメリカにおける公的扶助の行政不服審査-日本との比較の視点から-」『國學院経済学』国学院大学、pp.63-84、2017年3月)。 そして、A地域で生活保護裁判の原告である126世帯に対して、なぜ不服申立を行ったのかをその理由を聞いたところ(複数回答)。①生活保護制度が悪くなるのを防ぎたい70.0%、②基準引き下げの理由に納得がいかない64.2%と続いた。また、不服申立制度を利用するために必要なことを聞いたところ(複数回答)、①生活保護に対する偏見をなくす62.8%、②不服申立の手続きの簡素化、不服申立の支援をしてくれる人がそれぞれ38.9%と、生活保護の偏見を克服することが権利保障のために重要であることが分かった(「生活保護利用世帯の暮らしから見た生活課題―地域Aにおける実態調査から―」『立教大学コミュニティ福祉学部紀要』2017年3月22日、pp.97-112.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
引っ越しと所属先が変更になり、平成28年度の調査は順調にいかなかった面がある。しかし、審査請求の元担当職員、アメリカでの法的支援団体、Viki Lens教授等へのインタビュー調査ができた。また、アメリカの公的扶助改革において権利を抑制する改革が行われたことを明らかにした。さらに、生活保護利用者の生活実態調査から不服申し立てをする理由やそれをするために必要なことなどの確認をすることができた。そして、アメリカの審査請求の実態について、LAを例にとりながら、その運用状況やプロセス、特徴について、日本の制度と比較しながら、明らかにすることができた。 一方、平成28年度に訪問調査をした法的支援団体等のまとめ作業、生活保護利用者の実態調査の全体の分析、審査請求等に取り組んでいる弁護士等へのインタビュー調査がまだ作業課題として残っている。さらに、アメリカの州による違いを明らかにするためにも、ニューヨークやウィスコンシンの審査請求についても調査を進める必要がある。最後に、スウェーデンの審査請求の取り組みについても明らかにしなければならない課題が残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗が遅れているということもあり、残された研究課題は多くなっている。生活保護の審査請求や裁判に取り組んでいる弁護士には調査に関する了解を得たので、夏をめどにインタビュー調査を進めていく予定である。また、アメリカ、スウェーデンでの現地調査も現在準備を始めているところであり、本年度中に2か国を訪問する。スウェーデンの調査研究が特に遅れているが、スウェーデンの研究者と連絡を取りながら、効率よく調査ができるように進めていきたい。生活保護利用者への調査については、秋以降になるが、支援団体の協力を得ながら進めていく。 以上のように、本年度は調査がまだ多く残っており、本年度は調査に専念したい。なお、平成29年度は、最終年度となっているが、遅れのためにできれば少し延長をしたいと考えている。そのなかで、調査のまとめと論文作成作業に取り組みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成28年4月に北海道から埼玉に所属が変更になったために、旅費等の見積もりに誤差が生じたこと、また、スウェーデンの調査が未実施になったため、残額が生じたことが大きな要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に、アメリカとスウェーデンの2か国を現地調査で行く予定をしており、特に、アメリカの調査では、3、4地域を移動するために、旅費で支出のかなりの部分を使用する予定である。また、生活保護利用世帯、弁護士等の調査についても、飛行機を利用するので、多くの旅費がかかることになる。
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Research Products
(3 results)