2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03963
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Research Institution | Tottori College |
Principal Investigator |
菅田 理一 鳥取短期大学, その他部局等, 准教授(移行) (70611383)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 里親支援 / 家庭養護 / 子どもの貧困 / 児童福祉法 / 福祉思想 / 社会福祉史 |
Outline of Annual Research Achievements |
貧孤児救済施設による里親委託の実態の解明のために里親と里子の関係者のインタビュー調査及びその結果の分析、国外の歴史的実践のある里親委託制度に関係のある施設・機関への現地訪問調査を実施した。また日本社会福祉学会、社会事業史学会にて研究発表及び質疑応答を実施した。 インタビュー及び事例分析の結果は、昭和戦前期まで実施されていた貧孤児救済施設による里親委託が第二次世界大戦末期には委託料の支出が困難となり支障が生じ始めていたこと、同大戦終戦直後も委託先での養護は継続するが委託元施設と委託側里子村間の連絡調整は困難となったことを裏付けるものであった。従来施設が有していた委託コーディネート技術と1947年の児童福祉法による里親の制度化及び児童相談所の制度化後に行政機関が有した同様の技術との関連は現時点では判然としないが、従来施設の委託地域に法制度化後における里親会の拠点が設けられたことが分かった。 イタリアにて中世に創立された養育院を訪問し、史資料調査を実施するとともに里親委託関連資料の収集を行った。さらに現地研究者への同国の子ども観の変遷についてのヒアリング調査を実施した。同養育院では経済界の協力も得て財源的な裏付けのもとに保護者のない乳児を積極的に入院させる仕組みを導入していた。創立期の入院児の母子関係を裏付ける証拠品が現存していること、入院児に関する記録文書が現存していること、里親委託に関する研究が同国内外の研究者によって継続されていること、多様な分野からの研究に資するためのアーカイブズが構築されていることなどを確認した。社会的養護の史資料保存及び利活用の点で優れていると考えられる。収集資料の一部を検討したところ、同養育院による里親委託による養育システムの概要を確認することができた。引き続き収集資料を翻訳・検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、戦前期の里親委託制度のうち育児施設が実施していた委託の実態について、一次史資料を活用し当時の里親及び里子の事例分析を行うことで、社会的養護の草創期における里親委託制度の役割を明らかにすることを目的としている。 福田会育児院及び愛知育児院の事例に関する現存史資料は、内容や分量が時期によって偏っている。そのため作成したデータベースを用いた分析は、適宜入力範囲の追加及び調整を施しながら進めている。データベース構築が完了したとは言えないが、本研究の事例分析には耐えうるものと判断できる。一方、他施設との比較のための資料を国外にて得ることができ、研究目的の達成に重要な意味を持つと考えられることから、全体としては順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
社会的養護の草創期における里親委託制度の役割についての総合的な分析を実施する。福田会育児院及び愛知育児院の事例(データベース作成)、イタリアでの収集資料を使用した里親委託の実態の分析を進め、その結果を学会だけでなく東京及び愛知の地域福祉史研究会等でも研究報告する。その上で、多様な視点で分析したものを論考にまとめる。不詳となっている戦前期から戦後への社会的養護の連続性を明らかにすることも本研究に課されており、この点も踏まえた研究報告書をまとめる必要がある。
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Causes of Carryover |
渡航費用について使用額に変更が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果発表のための学会参加などを行うことからその費用として使用する。
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