2015 Fiscal Year Research-status Report
地域を基盤とした多文化ソーシャルワーク実践のためのプログラム及び支援体制の検討
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15K03964
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
門 美由紀 東洋大学, 社会学部, 助教 (40732780)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多文化ソーシャルワーク / 外国人住民 / 生活支援 / 多文化対応力 / 研修プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
日本及び米国を中心とする諸外国の多文化ソーシャルワーク及び多文化対応力等についての先行文献研究の収集と読み込みを適宜進めた。また、国内各地域の多文化ソーシャルワーク関連講座のプログラムについて資料収集を行った。さらに、地域レベルでの生活支援体制の構築過程と現状の課題を把握するために、支援機関等へのインタビュー調査を行った。具体的には支援体制構築の経緯、勤務体制、相談対応内容、相談対応に必要と考える多文化対応力知識・技術、多言語相談員・自治体職員・民間団体等との連携等の観点から話を聴いた。 本年進めた研究の中心として、日本で暮らす外国人住民への生活支援をめぐる地域福祉/ソーシャルワークの観点から、かれらの生活支援ニーズの解消を図る文化的多様性に配慮した社会福祉援助実践を多文化ソーシャルワークと位置づけ、福祉現場や外国人支援の現場等におけるソーシャルワーカーなど、多文化に関わるケースを経験し生活支援の充実を目指して活動している者11名に対して、インタビュー調査を行った。調査では、調査概要及び目的、実施方法の説明、同意書の作成を経て、75分程度の半構造化インタビューを実施した。その際、記録はICレコーダー及び筆記で行った。インタビュー内容は、①多文化に配慮した支援の必要性を意識したきっかけ、②外国人支援ケースに必要とされる多文化に配慮した支援の実際、③支援を通して考える、多文化に配慮した支援に求められる知識、技術、プログラム、④多文化に配慮した支援の充実のために求められる支援体制、の4点を中心に質問を行った。 平成27年度後半には、平成28,29年度に実施予定の諸外国での先進的取り組みに関する調査に向け、調査対象地域の候補を探し1か所に絞り込みを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本及び諸外国の多文化ソーシャルワーク、多文化対応力等についての先行文献研究では、先行文献を収集し現在読み込んでいるところである。関連文献数は当初想定していたより少なかったが、取り寄せ等に多少の時間を要したため、当初より読み込みが遅れているため、今後継続的にに進めていく必要がある。 各地域の多文化ソーシャルワーク関連講座のプログラム参照では、現在実施している地域のプログラム、テキスト等を入手した。また複数年の開催講座の検証を行った学会報告資料の入手、自身が委員として関わる講座で講座前後の受講者アンケートが実施され、今後のプログラム検証における参考とすることが可能になった。一方、講座実施を取りやめている複数地域については、以前の講座についての内容等の情報を得ることが難しく、平成28年度以降の課題である。 ソーシャルワーカー及び外国人支援を行っている者へのインタビュー調査は、当初の計画では平成28年度以降の実施を予定していたが、対象者からの内諾を複数得ることができたため、学内の研究等倫理審査で諮ったのちに、前倒しをして平成27年度に11名に対し実施することができた。 地域レベルでの生活支援体制の把握のためのインタビュー調査は、今年度は横浜市の一団体に対し行った。また、ソーシャルワーカーへのインタビュー調査を通して、東京都新宿区、愛知県の相談窓口の状況を把握することができた。調査で必要な視点等が明らかになってきたことから、仮説を構築して今後の継続的調査、複数個所調査へ反映させていくことが可能と考える。 また、平成28,29年度に実施予定の諸外国での先進的取り組みに関する調査に向け、調査対象地域の選定を行った。平成28年度は、アジア系ニューカマーの増加も見られるカナダのケベック州モントリオールとし、調査準備及び実施にあたってのコーディネート兼通訳者を1名確保することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28,29年度に先行文献研究の読み込みを進め、多文化ソーシャルワークの理論、必要とされる知識・技術、多文化対応力、講座等のプログラム構成、支援事例・支援体制についての整理・類型化をはかる。ソーシャルワーカー等へのインタビュー調査は、半構造化インタビューによって得られたデータのテープ起こしを完了させ、インタビュー内容の整理を行い、質的分析法によって分析する。先行研究の整理も参照し、平成28,29年度にかけて、多文化ソーシャルワークに求められる気づき・知識・技術を類型化する。平成29年度には、必要に応じて補足・追加インタビューを実施する。 地域レベルでの生活支援体制の把握のためのインタビュー調査を引き続き行うと同時に、これまで行ってきたインタビューやアクションリサーチを整理・分析し、現状の生活支援体制における政策的・実践的課題を抽出する。その際、平成28,29年度に実施予定の海外調査の知見を参照し、比較検討を行う。平成28年度の渡航先はカナダを予定しているが、平成29年度は必要に応じ同地域での追加調査及びインタビューを実施するか、同じく多文化主義を政策に掲げているオーストラリア等での実施可能性を視野に入れ、検討を進める。 以上、多文化ソーシャルワークの展開に求められる多文化対応力及びソーシャルワークの知識・技術についての検討、地域における支援体制の実態とその過程の把握を通して、地域で多文化ソーシャルワークを展開するための課題を抽出する。その際、諸外国での先進的取り組みに関する調査の知見も踏まえ、地域を基盤とした多文化ソーシャルワーク実践のためのプログラム及び生活支援体制の検討を行い、平成28年度より適宜論文執筆等を行っていき、最終年度の平成30年度には総合的考察と提案へとまとめたい。
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Causes of Carryover |
当初は量的調査実施を予定していたが、調査対象者が少ないことからインタビューによる質的調査に変更した。そのため、印刷費、郵送費、入力補助の人件費等の使用がなくなった。 質的調査については、学内の倫理審査委員会への申請を行ったため、1,2月に調査実施となった。結果、分析に使用予定のテープ起こし依頼を年度中に全て完了することができず、次年度へ一部繰り越しとなったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
テープ起こしにかかる費用の一部として、平成28年度に全額使用予定である。
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