2016 Fiscal Year Research-status Report
精神障害者の地域移行を促進する多機関連携によるクラウドシステムの構築と活用
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15K03966
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Research Institution | Japan College of Social Work |
Principal Investigator |
古屋 龍太 日本社会事業大学, 福祉マネジメント研究科, 教授 (70516343)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 精神障害者 / 精神科病院 / 退院促進 / 地域移行 / 地域定着 / 長期入院 / プログラム評価 / クラウド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、精神科病院に長期在院している社会的入院患者の退院・地域移行を促進し、地域社会での安定した生活への定着支援を実現することによって、精神病床の削減を図るために有効な精神科病院・地域事業所・行政機関の連携協働モデルを作るものである。WEBのクラウドシステムを用いて、実践化と協働して各地で展開されている取り組みを検証し、効果的な地域移行・地域定着支援のプログラムモデルとして効果を生み出すプログラム要素やプログラム理論を構築する。合わせて、精神科医療機関及び地域支援機関の実践現場で実施可能な効果的支援ガイドラインと実施マニュアルを作成し、全国各地での効果的地域移行・地域定着支援を推進することが本研究の目的である。 「プログラムモデルの形成評価」としては、①プログラム理論の作成、②効果的援助要素の抽出、③実施マニュアルの作成、④フィデリティ尺度の開発、⑤アウトカム評価指標・尺度の開発、⑥全国20エリアの機関による効果的プログラムモデル形成評価試行、を行う。現在は、申請者らが開発してきた地域事業所の効果的実施モデルをベースに、暫定モデルに基づき上記手順の①~④の精査検討と並行して、⑤~⑥を行っている段階にあり、⑥については次年度に実施予定である。 「クラウドシステムの整備と運用」については、研究参加機関にIDとパスワードを発行してログイン可能とし、クラウドシステムの内容はエリアIDにより、同一事例に係る精神科医療機関と地域支援機関等の協力機関のみ情報共有を可能とした。利用者アウトカムモニタリングとシステムアウトカムモニタリングを稼働し、クラウドシステムにより評価結果を即時視覚的にフィードバックすることが可能とした。今後このシステムを用いて、地域移行・地域定着支援途上にある利用者のモニタリングを継続し、評価ファシリテーターが研究参加機関とともに評価を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
精神障害者の脱施設化・地域移行支援をめぐっては、「病院と地域の連携」が最大の障壁ととなってきた現状を踏まえ、双方の実践家の取り組みから、より効果的プログラムモデルを現場に適用するための実施マニュアルを作成することとしてきた。 しかし、参加予定機関に対する研究プロジェクト説明段階において、精神科病院内における合意形成と倫理審査等に想定以上の時間を要し、さらに参加予定機関の圏域内で連携チームを構成する地域支援機関との密な情報交換に時間を要した。このため、当初予定していたプロジェクト参加機関20圏域の確保に至らず、初年度に予定していた「プロジェクト参加機関意見交換会」が初年度内に開催できなかった。全国のプロジェクト参加機関が一堂に会し、クラウドシステムを活用したアウトカムモニタリングの課題、創意工夫等を議論する意見交換会を今年度9月3日に開催することができたが、次年度も同様の機会を設けて、各地の実践家の取り組みと現場の工夫をベースとして、プログラムモデルの形成評価を図り、病院・地域・行政統合型の包括的効果的援助要素を再構成し、フィデリティ評価尺度を開発していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
「プログラムモデルの形成評価」については、今後も、①プログラム理論の作成、②効果的援助要素の抽出、③実施マニュアルの作成、④フィデリティ尺度の開発、⑤アウトカム評価指標・尺度の開発、⑥全国20エリアの機関による効果的プログラムモデル形成評価試行、を更に進める。 「クラウドシステムによるアウトカムモニタリング」については、参加機関を拡大し、地域移行・地域定着支援の対象者を増やし、効果的援助要素の形成評価を進める。クラウドの活用方法、利用者のアウトカムモニタリング方法は、初年度同様に行う。また定期的に評価ファシリテーターが関係機関を訪問しシステムアウトカムモニタリングを並行して行う。 「プロジェクト参加機関意見交換会の実施」については、初年度実施できなかったが、今年度は本プロジェクト参加機関の実践家と意見交換会を開催できた。次年度においても、出席エリア・機関とともに出席者を増やして同様の意見交換会を開催し、クラウドシステムによるモニタリング状況を検討し、プログラムモデルの形成評価を図り、フィデリティ評価尺度を開発する予定である。また、クラウドシステムを活用したアウトカムモニタリングの課題、創意工夫等についても議論を行う。 上記の取り組みを踏まえて「効果的支援ガイドライン・実施マニュアルの作成」に今年度着手している。病院・地域・行政統合型の包括的効果的援助要素を構成し、全国各地の精神科医療機関・地域支援機関・行政機関で実施可能な効果的支援ガイドラインと実施マニュアルを作成していく予定である。
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Causes of Carryover |
精神障害者の脱施設化・地域移行支援をめぐっては、「病院と地域の連携」が最大の障壁ととなってきた現状を踏まえ、双方の実践家の取り組みから、より効果的プログラムモデルを現場に適用するための実施マニュアルを作成することとしてきた。 しかし、参加予定機関に対する研究プロジェクト説明段階において、精神科病院内における合意形成と倫理審査等に想定以上の時間を要し、さらに参加予定機関の圏域内で連携チームを構成する地域支援機関との密な情報交換に時間を要し、初年度において十分な訪問説明と調査を実施できなかった。このため、当初予定していたプロジェクト参加機関20圏域の確保に時間を要し、初年度に予定していた「プロジェクト参加機関意見交換会」を2年目の当該年度内の9月3日に開催したが、プロジェクト参加機関からの出席者は7圏域16機関18名の参加者に限られた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
プロジェクト参加機関意見交換会に出席できなかったプロジェクト参加圏域には、評価ファシリテーターが訪問して説明会及び現状調査を計画的に行う。また、次年度においても参加機関が一堂に会し、クラウドシステムを活用したアウトカムモニタリングの課題、創意工夫等を議論するプロジェクト参加機関意見交換会を再度設けて、各地の実践家の取り組みと現場の工夫をベースとして、プログラムモデルの形成評価を図り、病院・地域・行政統合型の包括的効果的援助要素を再構成し、フィデリティ評価尺度を開発していく予定である。
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