2016 Fiscal Year Research-status Report
MCI及び初期認知症の人とその家族の二者関係への並行的調査・介入:前向き研究
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15K03983
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
山田 裕子 同志社大学, 社会学部, 教授 (80278457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武地 一 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (10314197)
杉原 百合子 同志社女子大学, 看護学部, 准教授 (90555179)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 初期認知症 / MCI / 家族介護者 / 二者関係 / BPSD / 並行的介入 / 認知症カフェ / サポート |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究の目的は、MCIおよび初期認知症の人のBPSDの解消ないし軽減・予防のために、本人と家族介護者への心理社会的に並行的介入(parallel intervention)を個別に設計し、その効果を検証することである。特に状況因性のBPSDの軽減・予防に効果を持つ介入方法を確立し、効果を検証する。スケジュールとして1年目に10組の聞き取り、2年目でその記録分析から効果的な介入方法を抽出し、介入プログラムを設計し、3年目でそのプログラム実施し、効果を測定するとしていたが、その計画は変更を余儀なくされたことは、昨年の実施状況報告書で明らかにした。 その計画変更は、「1)この研究の計画の元となったこれまでの研究の結果の見直しを質的分析で行い、認知症の人とその家族の双方の二者関係(dyad)の特質を測るアセスメント尺度を決めること、2)望ましい介入方法について、ワーキングチームでガイドラインを作成すること、3)並行して、この研究の趣旨であるBPSDの予防や削減の検証のために、ごく初期の認知症の人とその家族の研究参加を確実にすること、の3点を確認し、その後に実際の聞き取りを実施する」ことであった。 H28年度(2017)においては、1)のこれまでの研究の結果の見直しを質的分析で行ってきたが、研究者の体制および研究対象者のフィールドと研究体制に問題が生じた。当初の、研究分担者のもの忘れ外来患者リクルート計画は、治験の実施で、当研究の心理社会的介入と治験の効果の混同が予想されたため断念し、研究代表者が副理事長を務める認知症カフェの参加者に対象者を変更したが、カフェの運営資金確保と運営そのものに多大な時間を割く必要から、1)のデータの分析が遅れ、続く2)ガイドラインの作成、3)新たな研究参加者のリクルートも遅れている。さらに分担研究者2名の転任により、研究に支障が生じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実績の概要で記述したように、目的自体に変更はないが、この研究の基盤となった介入記録の分析を先行したことで、スタートそのものが遅れた。その変更は質的分析を必要とするが、介入記録が相当の分量であるために、多大の時間を必要とし、さらなる遅れを生じた。 とくに、この研究の目的である、状況因性のBPSDの軽減・予防について、その生成の機序への心理社会的な介入効果を検証するためには、認知症のごく初期またはMCIの人とその家族の参加を求めたいが、予定した外来患者が、治験が実施されたため、薬物療法効果と社会心理的介入のような非薬物療法効果の混同を懸念して断念せざるを得ず、認知症カフェの参加者からリクルートする方針に変えたが、そのために代表研究者自身が認知症カフェの運営に加わり、毎回カフェにスタッフとして貢献し、研究にかける時間が削られ、分析が滞ることになってしまった。 加えて、過去2年の間に、研究分担者2名がいずれも、新規開設された職場に移動し、開設業務に多大な責任と時間が取られた上に、以前のように日常的に打ち合わせと共同作業会を行う事ができない距離となり、この研究の進行と協議にも支障をきたした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究参加者を募るために必要だったフィールドとしての認知症カフェの運営における代表研究者のスタッフとしての貢献時間を、今後はさらに少なくし、分析のスピードを速める工夫もしてゆく。認知症の人とその家族の双方の二者関係(dyad)の特質を明らかにし、それを測るアセスメント尺度を完成させる。ワーキングチームに報告し、研究分担者から分析への助言や提言を迅速に得るとともに、ワーキングチームの協議と考察を進める。 一方、この間、運営資金を得るための努力の中で、BPSDおよび初期集中支援の文献レビューがなされ、その点での研究成果があがり、この研究の推進にも効果があった。BPSDの解消ないし軽減・予防のために、本人と家族介護者への心理社会的な並行的支援および介入(parallel support & intervention)を実行してゆく予定である。 また、BPSDに関しては、その状況因(環境要因)を定義し、明らかにすることが非薬物療法の効果的な使用を促進するためにますます求められており、そのためにも認知症の人とその家族の関係性を精査する方として、家族介護者からの家庭での相互作用についての回答を採集して行く。
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Causes of Carryover |
研究実績の概要で述べたが、昨年度、研究順序変更のため、代表研究者による質的分析研究が中心となり、しかも、研究参加者確保のためのフィールドとしてのカフェの運営への参画に時間を費やし、書籍以外に研究費を使用しなかったため、支出額が少なくなった。さらに、すでにのべたが分担研究者たちの新所属先での多忙により、ワーキングチームの活動が果たされなかった。このような状況が重り、この研究の進捗に支障をきたした。しかし今年度からは分担研究者もこの研究プロジェクトの推進に傾注することができる。 いずれの研究者の多忙さは、この研究のテーマである、認知症の高齢者とその家族へのサポートや治療の重要性と喫緊性のゆえでもある。福祉、医学、看護の実践と教育の再編成を伴い、これまで培かった専門知識と技能を教育および治療とケアの実践機関での発揮を求められたものであり、今後の認知症ケアの地平を切り開くことに繋がると確信する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
BPSDに関しては、その状況因(環境要因)を定義し、明らかにすることが非薬物療法の効果的な使用を促進するために求められており、そのためにも認知症の人とその家族の相互作用について、家族介護者からの回答を採集して行く。ついで認知症の人とその家族の双方の二者関係(dyad)の特質を明らかにし、ワーキングチームに報告し、分析への助言や提言を迅速に得るとともに、ワーキングチームの協議と考察を進める。その分析結果をもとに、望ましい介入方法について、ワーキングチームによりアセスメント尺度とガイドライン作成、次いで、そのガイドラインを基に本人と家族介護者への心理社会的な並行的支援および介入(parallel support & intervention)を順次実施する予定である。 それら一連の共同作業にかかわる謝礼など経費と支払いを行う。さらに共同研究の成果発表での旅費の使用も予定している。
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Research Products
(3 results)