2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03985
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
佐藤 順子 佛教大学, 福祉教育開発センター, 講師 (80329995)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フードバンク / 食品ロス法 / 生活困窮者支援 / バンク・アリマンテール / 心のレストラン / FEEDING AMERICA |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は国内外におけるフードバンク活動の実態調査を実施した。日本におけるフードバンク活動は農林水産省所管の「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」に基づく食品ロスの削減の一方策であるが、同省からの継続的な助成はなくフードバンク活動は寄付に依存している。また、ヒアリング調査によって、フードバンク団体は①食育活動やコミュニティレストラン等フードバンク活動以外の取組みを実施②生活困窮者等に対して直接食料支援を実施/生活困窮者等支援団体を通じて間接的に食料支援を実施/その両方を実施と支援方法に違いがあること③食糧支援は受益者である行政や生活困窮世帯等支援団体の選定基準に基いていることが多いことが確認された。 海外調査はフランス共和国並びにアメリカ合衆国で行った。フランスでは、心のレストラン、バンク・アリマンテール、食料を現物寄付によって提供しているモノプリ基金等の調査を行った。欧州貧困援助基金への移管と共に、フードバンク活動は食糧政策から貧困政策へシフトしている。政府は生活困窮者への食料支援を重点に置きつつ、食品ロス削減の観点も加えてフードバンク活動の基盤を支えており、フードバンク団体及び食料を受け取る支援団体等に関する法律・政令は詳しく規定されている。 アメリカでは、全米のフードバンク団体を統括するFeeding Americaをはじめイリノイ州Greater Chicago Food Depository,Northan Illinois Food Bank等の調査を行った。アメリカのフードバンク活動の主な目的は食品廃棄問題ではなく、フードスタンプ制度を補強する栄養補助プログラムの一環として位置付けられている。州政府の補助を一部受けながら製造業者、小売業者、個人からの寄付を受けて有給職員が充実しており、青少年等を含むボランティアの参加も活発である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の調査計画では、当初、国内におけるフードバンク活動調査を主眼に置いていたが、知己を得て、本研究計画の2年度時の課題であるフランス共和国並びにアメリカ合衆国におけるフードバンク活動についての調査をも実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度調査を踏まえて、今後はフードバンク活動が生活困窮者支援に寄与するための仕組みを考察する必要があると考える。具体的には、①フードバンク団体から食料を受け取る支援団体等についてさらなる実態調査を行うこと②2000年以降、政府・自治体・社会福祉協議会等がシステマテイックにフードバンク活動を展開している大韓民国の調査を実施することである。 ①については、本年度は3か所の支援団体等からのヒアリング調査を実施し、食料を施設の入所者・退所者に提供したり、食事会等のイベント開催時に受け取った食料を利用したり、施設を退所した利用者からの実費負担によってフードバンク団体への寄付している等の実態が明らかになった。一方で、①利用者や支援団体からフードバンクへの意見や感想等を伝える機会はあるものの、支援団体とフードバンク団体がお互いの課題を交換するところまでは至っていない、②提供された食料で生活することが日常化し、「自立」という方向には十分につながっていない、と支援団体スタッフが感じていなかったこと等が挙げられる。今後は、食料提供を受けている支援団体等に対するアンケート調査等の実施、さらにヒアリング調査を行うことによって、最終受益者である生活困窮世帯等の状況を把握し、フードバンク活動が生活困窮世帯等に対して「どのように」「どの程度」寄与しているかを明らかにしたい。 ②については、韓国フードバンク先行研究を参照しながら、生活困窮者支援における現物給付である食料支援の位置付けについて考察したい。
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Causes of Carryover |
平成27年度は当初、国内のフードバンク活動調査のみを計画していたが、平成28年度に実施予定であったフランス共和国並びにアメリカ合衆国のフードバンク活動調査を実施したため、旅費・謝金等に執行したことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度はフードバンク団体から食料を受け取る支援団体等の実態調査を行うとともに、連携研究者とも協議の上で、平成29年度に予定しているシンポジウムを本年度中に実施することとする。
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Research Products
(3 results)