2015 Fiscal Year Research-status Report
中華圏における福祉NGOの事業展開に関する比較研究
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15K03993
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
横浜 勇樹 大阪大谷大学, 教育学部, 准教授 (30369615)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 物主委員会 / 社区居民委員会 / 香港 / 児童福祉 / スクールソーシャルワーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、中国都市部のNGOと地域の福祉サービス機関との関係、協働の状況を把握する予定であったが、調査地である北京市内のNGOと調整がつかず、また中国の外国人への管理が厳しくなったこともあり、本調査については、調査票の作成をおこなうとともに、近年発刊された文献を基にして、中国都市部のNGOや社区居民委員会、社会組織、物主委員会、党支部との関係について分析した。特に近年、都市部のマンション群で発足している、マンションのオーナー組織である物主委員会の存在は、コミュニティにおいて大きくなってきており、新しい組織体として今後どのように他の組織と連携、協調していくかが注視された。そして、今後の物主委員会の活動の課題として、物主委員会の業務範囲の問題、法律・制度の構築の問題、当該委員会の権利と義務の問題、地域住民の参加意識との関係などがあげられた。 一方、香港におけるNGOの調査については、中国本土が調査困難であったことから、香港の児童福祉事業に携わるNGOについて調査をおこなった。香港の中心部でキリスト教を背景に設立された、あるNGOでは、その活動範囲は広く、施設内で児童の遊び場や知的障害児の職業訓練、心理カウンセリングなどの直接のケアを提供していた。また新しい発見として、香港のスクールソーシャルワーカーの活動がめざましいことがあげられる。当該NGOにおいて、スクールソーシャルワーカーは独立した資格を有しており、その活動範囲は、専門職集団としてオフィスを持ち、適宜、小中学校を訪問して学生の課題、親子の問題、地域の子どもの課題について把握し、その問題解決に向けて多方面の専門機関と連携していた。このスクールソーシャルワーカーの活動と専門性は、日本のそれとは大きくことなるため、今後の展開が注目された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中国本土のNGOの調査については、調査地のNGOの受け入れ態勢がその年度や担当者によって大きく変化することがあり、本年度においては事前に連絡と調整をおこなって、調査の協力を依頼していた担当者が代わったことが調査を困難にさせた要因であった。その場合に備えて事前にいくつかのNGOにも連絡をして調査実施を依頼していたのであるが、中国の社会情勢により外国人の受け入れ態勢が厳しくなったことが、中国本土でのNGOの調査をより困難なものにした。 しかし、本調査は中国、台湾、香港の3地点でのNGOの事業に関する比較研究であるため、台湾や香港のNGOとは調査のための調整や連絡はスムーズにおこなっており、その点では、順調に調査は進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は中国本土のNGOの活動を把握することが困難であったが、現在、JICAの北京事務所のスタッフと今後のNGOの調査について連絡・調整をおこなっており、調査地の選定も順調に進んでいるので、中国の外国人の受け入れ態勢の状況を見ながら、適宜、調査票を用いて調査を実施していく予定である。また、同時に本研究課題である、中国、台湾、香港の3地点でのNGOの活動の比較研究を進めるために、すでに台湾や香港と調整が済んでいるNGOについては、必要な研究協力員を確保しながら調査を実施する予定である。具体的な調査地については、台湾においては台中市内のNGOを調査し、香港においてはルーテル教会に所属しているNGOや、HKCSS(Hong Kong Council of Social Service)の関係しているNGOから選定して調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、中国本土で調査を実施をする予定であった外国人の受け入れ態勢が変化し、調査態勢が困難であったことが主な要因である。調査前において、当該NGOと綿密に連絡や調整をおこなってきたのであるが、中国の社会情勢の変化によって外国人を受け入れる情勢が突然変化したことは予期せぬことであった。そのため、中国本土の調査については、まずは安全に調査を実施すること、そして確実に成果をあげることを第一に考え本年度の調査実施を延期した。そのため、中国本土の調査に関わる調査員への謝礼金や調査票の作成、印刷、配布などに関わる費用が残余した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においては、すでに中国本土のJICA北京事務所や清華大学など、NGOの調査に関わる諸機関と連絡・調整済みであるため、適宜の時期において主に本年度の研究費の残余金を使用して調査を実施する予定である。同時に本研究課題である台湾や香港のNGOの調査を深めていく必要もあるため、本年度の研究残余金を使用して、適宜の時期に調査を実施していく。さらに本年度は、当該費用を使用して国際学会や国内学会で本年度の研究成果を発表し、本研究課題について多方面から意見を求めていきたい。
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