2017 Fiscal Year Research-status Report
精神障害当事者の語りを生かした福祉教育の普及に向けたシステム構築に関する研究
Project/Area Number |
15K03996
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
栄 セツコ 桃山学院大学, 社会学部, 教授 (40319596)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 精神障害当事者 / 病いの語り / 精神保健福祉教育 / エンパワメント / 当事者研究 / ネットワーク構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、精神障害をもつ当事者の語りを生かした福祉教育の普及に向けたシステムを構築することにある。研究期間は4か年であり、本年度はその3か年次にあたる。 前年度までの2か年は、当事者の語りを生かした福祉教育を行っている機関・団体のフィールドワークを行い、各々の特性を織り込んだ福祉教育の教材を作成した。 今年度もフィールドワークを継続しながら、当事者の語りを生かした福祉教育の普及システムを構築するにあたり、効果的な福祉教育活動の要素を析出することを研究目的とした。そこで、プログラム理論を援用し、先駆的な福祉教育を行っている機関・団体のプログラム評価を行った。その結果、少なくとも、福祉教育の普及には、以下の3点が不可欠であることが明らかになった。①チームの形成:当事者の語りに価値をおき、それを生かした福祉教育の有効性を認める人々や機関で構成されるチームを形成する。具体的には、福祉教育の普及に関して、地域福祉の観点をもつ社会福祉協議会、子供たちの教育的効果を目指す教育委員会、子どもたちのメンタルヘルスの向上の観点をもつ保健所、病いの語りを子どもたちに伝授する当事者・家族とその支援者や障害福祉サービス事業所等の機関、地域の政策等に影響をもつ障害福祉に関する公的機関などがある。②福祉教育のパッケージ化:福祉教育における効果的な授業案を作成する。例えば、50分の授業における構成として、導入(授業の目的)ー当事者の語りーグループワーク(語りをふまえたワーク)ークロージング(感想)等である。③ネットワークの構築:福祉教育の賛同者を増大させる方策として、信頼できる教職員に教授し、地道に賛同者を増やす方法と、不特定多数の教職員に福祉教育の有効性を伝え賛同者を募る方法がある。 今後の課題として、析出された福祉教育の普及に向けたシステムの要素の妥当牲を検証する課題がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、3年次を終えて、おおむね順調に進展している。 当初の研究計画より、やや遅延した理由として、2点が考えられる。第一に、精神障害をもつ当事者の体調不良がある。学校のような公共の場において、精神の病いの語ることは当事者にとってストレスが高く、活動そのものを休止するメンバーもいた。第二に、訪英しヒューマンライブラリーを視察し、その普及システムに関する情報収集を計画していたが、治安の悪さから視察先を米国に変更したことである。米国では、ピアサポートの普及とともに、当事者のリカバリーストーリーが聞かれる機会や場がみられたが「学校」という場における語りの情報はほとんど得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、福祉教育の普及に向けたシステム構築に関する効果的な活動の要素に関して、その有効性に関する検証を行う。 次年度は、本研究の最終年度にあたることから、4か年間の研究の成果報告とともに、精神障害当事者の語りを生かした福祉教育の普及に向けたシステム構築の提示を行う。
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Remarks |
1.栄セツコ(2017)「公共の場における精神障害者の語りーエンパワメント実践を超えて ー」立命館大学先端科学研究科博士論文.2.栄セツコ(2017)平成29年度研究成果報告書『精神障害当事者の語りを生かした福祉教育の普及に向けたシステム構築に関する研究』全104ページ
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Research Products
(12 results)