2016 Fiscal Year Research-status Report
ニューカマーの障がい者のための生活支援システムの構築‐滞日ブラジル人の調査から‐
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15K03997
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
寳田 玲子 関西福祉科学大学, 社会福祉学部, 准教授 (00388662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 志保 関西福祉科学大学, 心理科学部, 講師 (00412106)
柿木 志津江 関西福祉科学大学, 社会福祉学部, 准教授 (70319804)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 滞日ブラジル人 / 生活課題 / ソーシャルワーク / キャリア支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、滞日外国人の現状および生活課題を把握し、医療・福祉制度やサービスの改善につなげていくことを目的に、2015年度は全国の滞日外国人支援関連団体を対象に、アンケート調査(「滞日外国人に対する支援状況に関する調査」)を実施した。当該年度は調査結果の分析を行った。滞日外国人の滞日外国人支援団体に寄せられる相談内容の内訳と活動内容の実施状況との関連性をみたところ、相談活動、生活情報の提供および通訳等の派遣を実施している団体・機関では、相談内容の全ての項目に有意差が認められ、寄せられる様々な相談内容に対応していることが分かった。 さらに、滞日外国人の相談内容をカテゴリー化し、マズローの基本的欲求の理論と関連付けながらニーズの把握を行うと、彼らのニーズは生理的な欲求から所属と愛の欲求の階層に位置していることが分かった。成長欲求でもある自己実現の欲求を滞日外国人自らが求め、満たしていくためには、まず基本的欲求である生活の安定および地域・社会への帰属意識を持つことが重要であり、その前提条件となる環境整備が必要であることが示された。 それを踏まえて、滞日外国人支援団体や、滞日外国人当事者でもあり、かつ支援者でもある方々へのインタビュー調査を行った。また、アンケート調査から詳細な実態を把握することができなかった障がい児・者の現状についても、インタビュー調査を通じて情報収集を行った。インタビュー調査からは、子どもたちへの学習支援のみならず、キャリア支援や障がい者支援が大変重要であることが分かった。また、子どもたちのアイデンティティ確立のための母語教育の重要性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、滞日外国人の生活課題について、具体的にどのような課題があるのか、滞日外国人支援団体や、滞日外国人当事者でもあり、かつ支援者でもある方々へのインタビュー調査を行うことができた。その中で、KJ法で分類したアンケート調査の課題について、インタビューでは、紹介された事例を通して確認することができた。アンケート調査から詳細な実態を把握することができなかった障がい児・者の現状についても、インタビュー調査を通じて情報収集を行うことができた。インタビュー調査からは、子どもたちへの学習支援のみならず、キャリア支援や障がい者支援が大変重要であることが分かった。また、子どもたちのアイデンティティ確立のための母語教育の重要性も示唆された。 そこで当該年度は、キャリア支援ワークショップを小中学生の子どもたち向けに開催したり、領事館やNPO団体と協働して、福祉サービスに関する情報を日本語とポルトガル語の二か国語で提供した。 また、小学校の補習学級や、母語教室等の滞日外国人の子どもたち向けの支援活動を視察し、実際の支援についても確認することができた。インタビュー調査からは、日本で生活していくための子どもたちのキャリア支援、アイデンティティ確立のための母語教室の重要性について改めて確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続きインタビュー調査を継続しながら、さらなるニーズの把握を進めていく予定である。また、滞日外国人家族が抱える問題の一つに、メンタルヘルスが深刻であることがインタビューを通して確認されたため、メンタルヘルス問題についても実態を明らかにしていく予定である。具体的には母語で相談に乗れるメンタルヘルス専門家へのインタビューを行っていく予定である。 また、滞日外国人のコミュニティが抱える生活課題について、地域住民、および福祉などの対人援助職の専門家など、他の人びとにも理解を深めてもらう機会をさらに作り、啓発活動を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度もインタビュー調査を継続して進めていく予定であり、そのための旅費の執行を抑えていたため、最終的に執行が少なかった。 さらに、今後は滞日外国人支援団体および当事者の方々とのセミナーを開催予定であり、そのための活動費をねん出する必要がでたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インタビュー調査にかかる旅費や人件費・謝金、分析に必要な物品費 セミナー開催のための準備費等に充当する予定である。
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Research Products
(5 results)