2015 Fiscal Year Research-status Report
高齢期の居住移動と定住要件の研究-沖縄離島は安住の地となり得るか-
Project/Area Number |
15K03998
|
Research Institution | Osaka University of Human Sciences |
Principal Investigator |
時本 ゆかり 大阪人間科学大学, 人間科学部, 講師 (50581055)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 島嶼地域 / 地域福祉 / 離島地域 / 定住・移住 / 高齢者 / 文化継承 / U・Iターン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、離島の地域生活者の生活の状況を把握するために複数回の現地調査および研究会を開催し分析を行った。1.高齢期:Iターン者は村落部でもみられるが市街地での生活者が多く、村落によってIターン者受け入れ意識が異なる可能性を確認した。また、地域と何らかのつながりがあることが暮らしの安心、定住の促進の要因となっていた。その繋がり方は、地域独自の慣わしが関係している可能性が考えられた。Uターン高齢者は、かつて沖縄本島での生活を拠点としながらも、祭事・行事で頻回に帰島し、地域とのつながりを継承している。家継承意識が強く、定年退職を機会にUターンしている傾向があった。2.壮年期:Iターンの市街地での生活者は、地域の付き合いはほとんどなく仕事上での付き合いの範囲であること、一方で農業や村に入った者は、村の祭事や行事に参加、慣わしに従うなどの地域と溶け込む形で生活を営んでいた。共通するのは、かつて訪れた経験のもとで離島の魅力を思い出し移住していること、また多くは来島以前の仕事経験が生かせるような職業に就いている。3.農業者の状況について、宮古地域の新規農業者は微増傾向であること特に青年農業者の新規参入が増えている。一方で八重山地域は減少傾向にあることが確認された。Iターン者が新規就農をしている事例も確認した。4.文化継承について、民間の上布の製品販売、縫製者や織物協会への聞き取りを行った。上布を継承するためには上布製作に携わる人々の横のつながりと生活保障が必要であること、製作、展示、販売の体系化が必要であることを確認した。5.青年期の進路・就職意識や郷土意識、島への定住意識について関係者から聞き取りを行った。八重山地域、宮古地域において高校卒業後は進学、就職で沖縄本島、本土へ一旦出ていくのが慣例であるが、間もなく何らかの理由で戻ってきている流れがあることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたとおり多様な背景の地域住民にヒアリングができるなど順調である。分析が進んだものは学会発表1件、学会研究例会発表1件及び会報誌掲載にて公表した。次年度においても学会発表の予定が具体的に進んでいる。また一方では当該年度の予定外であった先島地域の高校生対象の質問紙調査の内容検討を行たっため、当年度に予定していた一部は次年度以降に検討することとなったが、長期計画的には支障はないものと思われるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度の計画は以下の通りである。宮古地域では、村落での地域住民生活に密着した参与観察等を行う。八重山地域においては、村落部の住民への地域生活や他出家族、定住意識などについてヒアリングを実施する。また、高校生に対しては両地域を対象にして質問紙調査を実施し、進路決定要件および地域への愛着を明らかにする。これらと同時に、農業関係、伝統文化継承者など多様な職業者から聞き取りを行い、これら結果から年代差、職業差、地域差を分析する。
|
Causes of Carryover |
当該地域は時期により航空運賃の変動があるが、比較的安価な航空運賃の時期に行くことが出来たため差額が生じている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度へ繰越し、現地調査の延べ回数を増加して研究を進めたい。
|