2015 Fiscal Year Research-status Report
仲間の排斥・攻撃行動の許容における仲介・調整プロセスの検討
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15K04023
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
礒部 智加衣 千葉大学, 文学部, 准教授 (20420507)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 内集団メンバーの排斥・攻撃 / 集団特徴 / 集団アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の3点を検討した。 まず、集団信頼が被排斥者の受容に及ぼす影響を検討した。実験室実験を行い、SNSを模した状況において、排斥場面を操作し、被排斥者に対して「いいね」を表示するかどうかを検討した。集団信頼が高い場合よりも低い場合に受容する傾向がみてとれた。 次に、他の集団メンバーの応報的な攻撃行為に対する受容的態度を検討した。他集団からの攻撃に対して、応報的に攻撃するよりも報復しないことは、観衆からの評価を高めることが確認された。報復しないことが集団地位の優位性を意味すると判断されたためだと考えられる。この結果を受けて、Nawata & Yamaguchi (2013) および縄田・山口 (2011b)の実験手法に基づき、代理報復の抑制要因を検討した。観衆に報復行為を見られる状況下においては、観衆からの集団イメージを維持・高揚するために、反撃が減少するという仮説に一致する結果は得られなかった。性別などの個人差が影響する可能性が示唆された。 最後に、犯罪歴(横領)のある他者を仲間としての受け入れるかどうかを検討した。質問紙における場面想定法を用い、その他者が過去によい行いをしていた人(Hero条件)か、過去に犠牲を伴っていた人(Victim条件)かを操作した。その結果、過去によい行為を行っていた人の方が、拒絶されやすいことがわかった。自由意思によって仲介されると予想したが、仲介効果は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
被排斥者への対応における個人差の影響も検討するため、実験の参加者をさらに増やし、同実験をひき続き行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
集団における排斥者への援助行動を促進・抑制する集団要因の検討を行う。これまでの申請者らの研究により、集団の優位性・集団移行可能性の低さ・集団協力の高さが被排斥者の援助を抑制する可能性が示された。今年度は、まず、被排斥者への援助を促進・抑制する要因を現実場面に沿った状況で検討する。そのため、自治体等を対象とした集団・組織における排斥を対象とし、インターネット調査を計画している。どのような集団特徴が、排斥の援助を促進するか、また集団所属欲求を高めるのかを明らかにすることを目的とする。加えて、実験的な手法を用いて、効果的な被排斥者の援助方法も検討する。被排斥者への援助は排斥者への攻撃を意味するという点に着目し、被害者だけでなく加害者の対応を同時に考慮した検討を行う。 また、ネガティブな行為(モラル違反・犯罪等)を行った成員に対する、内集団の反応を検討する。黒い羊効果では、ネガティブな内集団成員は、外集団成員よりも低い評価を与えられることが知られている(Marques, Yzerbyt and Leyens, 1988)。本研究ではさらに、ネガティブな行為を行った成員に対し、内集団がどのような対応(謝罪、罰・制裁等)をするのかに着目して検討する。内集団の対応は、対外集団に対する内集団のイメージに影響する。内集団の対応がどのようなものであれば、他の内集団成員はその人を赦すのか、集団アイデンティティを維持することができるのかについて、場面想定法を用いた調査を行うことによって検討する。
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Causes of Carryover |
昨年度の11月下旬より、産休・育休を取得した。そのため、実験を途中で中断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度に中断した実験を引き続き行うために、人件費として利用する。参加者を増やし、個人差の影響も検討する。また、プログラムソフトを購入しパス解析等の分析を行う予定である。
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