2015 Fiscal Year Research-status Report
量刑判断に至る影響因子について-ゲイン・ロス効果を踏まえた重回帰式モデルの作成-
Project/Area Number |
15K04044
|
Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
北折 充隆 金城学院大学, 人間科学部, 教授 (30350961)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 量刑判断 / 反省 / 重回帰モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、通貨偽造・殺人・強盗罪などの、故意かつ重大な裁判について傍聴を行った上で、故意に行った重大犯罪について、裁判シナリオを作成した。 これまで北折・油尾(2013)などでは、危険運転致死傷罪を素材としたシナリオを作成し、一部ゲイン・ロス効果の検討を行ってきた。危険運転致死傷罪を素材としたのは、自動車運転過失致死傷との境界が曖昧であり、蓋然性に基づく(未必の故意による)犯罪であることで、多様な判断ができると考えた事による。その結果、条件間の差異が一部に見られ、弱いゲイン・ロス効果の影響力が見られた。 このように、一部にその影響が見られたにとどまった原因の一つには、危険運転致死傷罪は故意性が曖昧であり、明確な殺意や自己中心的な動機に基づくものでなく、ゲイン・ロス効果の影響を見えにくくしていたと考えられる。しかし、判断の多様性が期待できないシナリオでは、調査結果に天井効果が出てしまう(Ex:大量殺人など、ほぼ100%の確率で死刑の判断が下る)。 そこで本プロジェクトの初年度では、これまでの問題点を修正する形で、明確な故意に基づいた犯行ながら、傷害致死と殺人罪で判断が分かれやすい、幼児虐待致死事案を裁判シナリオとして作成し、再度効果を検討した。 27年度は被告の反省を強調した弁護を行い、ゲイン・ロス効果が顕現化されると予測し分析を行った。被告の反省の程度を強調するのは、弁護側の基本的な法廷戦術であるが、心証としてはよりポジティブになるため、その分ゲイン・ロス効果が増幅されると予測したが、そうした結果は見られなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、基本となる裁判シナリオの作成が課題であったが、これについては無事に作成する事に加え、調査を実施することが出来た。これは、初年度想定していた計画に、遅れることもなく遂行できている状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降は、前年度に得られた基礎データをもとに、さらに条件を変更する形でWeb調査を重ねる。28年度は、被告の生育環境を操作する形で、調査を実施する。虐待は、世代間伝達が行われやすい犯罪(親から受けた虐待を、子供にもしてしまう)といわれる。一般に、そうした境遇は、「それなら子供の痛みもわかるはずだ」などと、心証としてマイナスに働く反面、「この人も辛い思いをしてきたのだな」と、プラスの心証をもたらす可能性もある。いずれに作用するのかは、被害者・加害者のどちらに共感するかによるが、一般市民の感情が、裁判にどのような影響を与えるのかはこれまで明らかになっておらず、本研究で確認する。
|
Causes of Carryover |
調査紙を印刷するための印刷機を購入予定であったが、平成27年度に限り、特別に学内設置の印刷機を使用することができたため、購入を1年見送った。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に印刷機を購入予定。
|