2015 Fiscal Year Research-status Report
スクール・エンゲージメント促進のための動機づけ介入研究
Project/Area Number |
15K04057
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中谷 素之 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60303575)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スクール・エンゲージメント / 動機づけ / 学習 / 小学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
エンゲージメントとは、従来の一般的な適応感の概念を超えて、認知的、情動的、そして行動的の統合的な側面から、積極的・能動的に活動に関与している状態を指す(Frederickson et al., 2008)。本研究では、近年教育心理学領域において注目されるエンゲージメント概念の視点に立ち、児童・生徒の能動的関与を高めるための教育環境づくりについて、特に児童・生徒および教師のもつ動機づけを中核とした枠組みから検討を行うものとする。まず、学校への能動的関与状態をスクール・エンゲージメントとして概念化し、尺度化を検討した上で、教室環境における包括的なエンゲージメント向上に関わる学業的・社会的要因を明らかにする。そして、認知的・情動的動機づけ介入によるスクール・エンゲージメント促進について、実証的な検討を試みる。単なる適応という概念を越えて、学校での活動に能動的に取り組んでいるというスクール・エンゲージメントの視点から、児童・生徒の学習活動の促進をとらえることで、従来の動機づけ研究の知見を、より幅広い、実践的な適合性をもった枠組みから提案できることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
児童・生徒の学校活動への積極的関与を意味する“スクール・エンゲージメント”の概念について、国内外の教育学・教育心理学のエンゲージメント研究の動向や、エンゲージメントの概念を扱った研究を総合的にレビューし、文献調査を中心に、理論的な背景についての分析と検討を行った。また当該領域の研究者や関係する学会等での資料収集も積極的に行った。 その結果、エンゲージメント研究は、主に児童・生徒の学習活動に焦点があてられてきたものではあるが、社会的な側面(例えば通学の継続や退学、対人関係への適応など)や、自己に関わる側面(例えば無気力や自尊感情など)にも関わりの深い概念であることが示唆された。 さらに、スクール・エンゲージメントの測定および介入実践を行うために、調査協力および実践的介入協力を得るために、依頼と調整を行うとともに、次年度以降の測定および実践のための予備的な尺度項目や調査内容の検討についても、準備を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は“スクール・エンゲージメント”の概念を検討するうえで必要な先行研究のレビューや概念的な問題について、最新の研究動向を踏まえて検討した。次年度以降は、スクール・エンゲージメントはどのような形で測定が可能であり、また教育実践のなかでどのように促されうるか、に関して検討していくことが必要である。 そのために、第一には、スクール・エンゲージメントを測定するための児童・生徒の自己評定式尺度を新たに開発し、数量的な分析や検討が可能なものにすることが必要である。また第二には、教育実践のなかで、スクール・エンゲージメントがどのように機能し、学習や学校生活のなかに影響しているのかを明らかにするため、教育実践的な文脈での介入研究を行うことも重要であろう。これらの点を課題として、次年度以降に児童・生徒のスクール・エンゲージメントを促進するための方策と支援についての知見を得ることを目標とする。
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Causes of Carryover |
初年度の研究では、文献研究および予備調査、資料収集等に充てる費用を計上していた。さまざまな資料調査および文献研究を行い、スクール・エンゲージメントにかかわる概念的定義や関連研究の検討を行った。しかし、児童・生徒への予備的な調査や教員へのインタビューについては、研究協力校の都合により、必ずしも当該年度内に実施することができず、その予算の支出が予定の通りにはならなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には、予備調査や、授業場面での観察的検討を行い、協力関係が構築できれば、海外における授業場面の観察等も行う可能性もあり、それらに予算を支出することを計画している。
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