2016 Fiscal Year Research-status Report
スクール・エンゲージメント促進のための動機づけ介入研究
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15K04057
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中谷 素之 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (60303575)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エンゲージメント / 学習動機づけ / 児童 / ライティング / 介入研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、わが国の学校教育については、児童・生徒の学力の低下や、それをささえる学習意欲の低下が問題にされることが少なくない(例 文部科学省, 2004)。児童・生徒が、「言われた課題や宿題は行うものの、自分から課題に取り組むことは少ない」といった声も教育現場からしばしば指摘されるところである。このような児童・生徒の学習状況のなかで、単に学習時間がどうであるか、また結果としての学力がどの程度高いか、というだけではなく、より主体的・能動的な関与が可能になっているかどうかが重要な問題となる。 教育心理学研究において近年注目されるエンゲージメントの概念は、このような学習への主体的・能動的な関与を意味する概念であり、単なる学習適応を越えて、動機づけを含む積極的な関与状態をあらわしている(例 Fredericson et al., 2008)。本年度の研究では、児童の学習におけるエンゲージメントに着目し、教科学習における児童のエンゲージメントを高めるための実践的介入の試みを行った。 わが国の教育施策のなかでも中核的な課題として位置づけられている”言語活動”を支援し促すことを目的に、国語科のライティングを対象とした特別授業を実践した。すなわち、愛知県A市の公立小学校と研究連携を結び、小学6年生の修学旅行の作文をいかに書くかという特別授業を設定し、研究課題とした。とりわけ、学習研究で注目される動向である”自己調整学習研究”の枠組みを基に、作文の特別授業への介入を構築し、児童の学習へのエンゲージメントおよび課題成績が向上したかどうかについて検討を行った。その結果、作文への動機づけ介入によって、児童のエンゲージメントや課題成績が向上する傾向がみられることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スクールエンゲージメントのなかでも、学習への主体的、能動的取り組みは、とりわけ児童にとって重要な課題であり、教育的にも中心的問題である。本年度の研究では、小学校高学年時におけるライティングの課題に焦点を当て、特別授業を設定して児童の学習とエンゲージメントを促進することを試みる研究を行った。非常に貴重な実践であり、科研費による支援によって研究課題が順調に進捗していると見なすことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では、スクールエンゲージメントの促進を目的として、実際の授業場面において、自己調整学習研究の知見に基づく、ライティング課題への支援と指導を実践し、その効果の検討を行った。得られたデータは質的・量的な量の多いものであり、その評価は簡単に行うことはできないため、次年度にはこれらの質的・量的データについて丁寧な吟味・検討を行うこと、そしてその成果を国内外で発信していくことが必要であると考える。また可能であれば、この知見に基づいたある程度規模の大きな調査等も行うことが有益であろう。
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