2017 Fiscal Year Research-status Report
スクール・エンゲージメント促進のための動機づけ介入研究
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15K04057
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中谷 素之 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (60303575)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エンゲージメント / 学習動機づけ / ライティング / 文章評価 / 介入研究 / 自己調整学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国の児童・生徒の学力問題に関して、学業達成の高さに比して、その意欲の低さが課題であるとして問題視され続けている(文部科学省, 2017)。とりわけ、新学習指導要領においても、児童・生徒の言語能力やリテラシーの重要性が指摘されるなか(新井, 2018)、言語活動の面白さに注目させ、いかに興味や意欲を引き出すかは今日のわが国における学校教育の重要な課題である。 本研究は、学習への主体的、情緒的、行動的な取り組みを意味するエンゲージメント(engagement)に焦点を当て、従来言われてきたような単なる学習適応を越えて、動機づけを含む学習への積極的な関与状態(例 Fredericson et al., 2008)の枠組みから、多面的な動機づけ促進の教育的実践の検証を行うことを目的としている。 本年度の研究では、昨年実施したライティングにおける児童のエンゲージメントを高めるための実践的介入の教育効果を詳細に検討すること、そしてその成果を学術論文として発信することであった。作文学習における、児童120名の作文の質的検討を行い、あわせて質問紙調査で測定した興味や学習動機づけ、学習行動の諸変数との関連を検討した。作文への動機づけ支援群では、方略支援群に比べ、文章の文字数が増加することに加え、文章に現れる要因の数、および文章構造の質的向上も見られることが明らかとなった。いかに文章を書くか、というライティングの方略指導だけではなく、何のために文章を書くか、というライティングの動機づけ支援の指導によって、作文の内容が量のみならず質的にも高まるという本研究の結果は、動機づけ促進によって言語算出がどのように促されるかを明らかにするものであり、学習動機づけおよびライティング指導について実践的示唆を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研費による支援により、授業実践の際の研究補助者の謝金や、介入研究の際の諸物品の購入について、準備することが可能となった。本年度は、児童の作文の量的・質的な評価を行い、また必要な研究情報の収集や交換のために、学会やシンポジウムへの参加などに費用を用いた。当初想定していた平成29年度末の終了には至らなかったものの、おおむね想定していた進捗でデータの検討や評価、また論文化の準備が進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定であった平成29年度末時点での完了には至らなかったが、平成30年度に研究期間を延長することにより、研究データを質・量あわせて丁寧に評価、分析し、学会発表と論文化に準備することが可能となる。 また、本研究課題の期間に増加した国際的な研究交流を共同研究の機会に発展させること、および最新の研究動向を共有するため、4月に全米教育学会に参加し研究資料の収集を行い、学会発表や論文化の上で重要な研究交流と資料収集の機会を得た。 最後に、本研究による成果をウェブサイトから社会に発信するための費用として、その2割程度の費用に科研費を用いる予定をもっている。
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Causes of Carryover |
平成30年度に研究期間を延長することにより、研究データを質・量に丁寧に評価、分析し、学会発表と論文化に準備することが可能となるため、延長を申請し了承を得た。 また、本研究課題の期間に増加した国際的な研究交流を共同研究の機会に発展させ、および最新の研究動向を共有するため、4月に全米教育学会に参加し研究資料の収集を行い、本研究課題の学会発表や論文化の上で、重要な研究交流と資料収集の機会を得ることができた。さらに今年度のうちに、本研究課題を論文化させるための英文校閲等の費用にも研究費を支出することを計画している。以上のような理由から、延長使用の見込みとなった。
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Remarks |
現在、科研費の成果を含めて作成中。近日完成・公開予定。
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