2016 Fiscal Year Research-status Report
空間的視点取得における身体性の生涯発達過程とその仕組みの解明
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15K04060
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
渡部 雅之 滋賀大学, 教育学部, 教授 (40201230)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 空間的視点取得 / 平衡感覚 / 重心動揺 / 運動能力 / 身体性 |
Outline of Annual Research Achievements |
身体運動能力と空間的視点取得能力が正の関連を示すとする予想、ならびに身体運動能力の低い者は高い者に比べて感覚運動刺激による空間的視点取得能力の効果的な向上が見られるとする予想を、高齢者を対象として検討した。 68名の健康な高齢者が、ビデオゲーム形式の空間的視点取得課題を、2種類の感覚運動刺条件下(拘束条件と不安定条件)で実施した。また、平衡性に関して、重心軌跡測定器による立位時の重心位置測定を行った。30秒間ならびに15秒間の閉眼起立時と、5秒、10秒、もしくは15秒間の開眼片足立ちを求め、総軌跡長、単位時間軌跡長、外周面積、矩形面積を計測した。さらに、足蹠投影機を使用して、土踏まず面積、土踏まず面積比、土踏まずHライン距離、土踏まず発達度、足蹠面積、足趾除く足蹠面積、足蹠の足長、足蹠の足角、拇指角度の各指標について計測した。 空間的視点取得課題の反応時間を基準変数とし、重心動揺の各種指標と身体的特徴を説明変数として重回帰分析ならびに判別分析を行った。その結果、重心動揺の2種類の指標の組み合わせで認知機能の低下を有意に予測できることがわかった。また、性別に空間的視点取得課題の拘束/不安定条件間の身体移動時間を比較した。男性でのみ有意差が示され、不安定条件が拘束条件よりも速かった。さらにPearson相関係数を空間的視点取得課題と重心動揺との間で性別に算出した。男性にのみ拘束条件の身体移動時間と矩形面積差との間、ならびに拘束/不安定条件間差と矩形面積差との間に有意な関連が示された。これらは昨年度、大学生で示された結果と同じであった。 以上の結果は2つの仮説を支持するものであった。 これらの成果の一部を、国内外の学会(日本教育心理学会、日本発達心理学会、国際行動発達学会)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画に挙げた高齢者からのデータ収集を実施した。当初30名分とした目標を上回る68名分のデータを収集した。さらに身体機能に関しては、本研究の主要な変数である平衡性だけでなく、足蹠形状に関しても複数の指標に関するデータを収集し、空間的視点取得能力との関連を詳しく明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年間の実験実施状況を振り返えると、成人であっても一人の対象者ごとに相当の手間と時間を要したことから、平成29年度に予定していた小・中学生からのデータ収集を取りやめ、幼児のみに絞り込む。代わりに、30名程度と考えていた目標数を倍の60名程度に引き上げて、研究の質を確保する。この変更により、本研究では幼児・大学生・高齢者の3つの年齢層を対象とすることになるが、幼児・高齢者に比して大学生のデータが少ないため、30名分程度の追加実験を行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度から平成28年度にかけて未使用繰越金があったが、平成28年度の研究で重心軌跡測定器の購入に他の研究助成資金を充てることができたため、繰越金を使用せずにすんだ。そのため、繰越額のほとんどが、さらに平成29年度に繰り越されることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度研究計画を一部変更し、大学生を対象とする追加実験を行う。そのために必要となる追加の経費に充てる。
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