2017 Fiscal Year Research-status Report
空間的視点取得における身体性の生涯発達過程とその仕組みの解明
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15K04060
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
渡部 雅之 滋賀大学, 教育学部, 教授 (40201230)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 空間的視点取得 / 生涯発達 / 身体性 |
Outline of Annual Research Achievements |
44名の幼児とデータが不足していた大学生10名からデータを収集した。ビデオゲーム形式の空間的視点取得課題を、2種類の感覚運動刺条件下(拘束条件と不安定条件)で実施した。また、平衡性に関して、重心軌跡測定器による立位時の重心位置測定を行った。30秒間の閉眼起立時と、5秒、10秒、もしくは15秒間の開眼片足立ちを求め、総軌跡長、単位時間軌跡長、外周面積、矩形面積を計測した。 昨年の高齢者データと一昨年の大学生データにこれらのデータを統合した。空間的視点取得課題の反応時間で3水準にクラス分けし、重心動揺の各種指標について一元配置分散分析を行った。その結果、総軌跡長と矩形面積の2種類において有意な主効果が示された。多重比較の結果、空間的視点取得課題の成績が最もよかった群は、総軌跡長が最長で、矩形面積が最小であった。次いで、空間的視点取得課題の不安定条件における反応時間を基準変数とし、重心動揺の総軌跡長と矩形面積を説明変数として重回帰分析を行った。その結果、これらの組み合わせで認知機能の低下を有意に予測できることがわかり、標準化偏回帰係数は総軌跡長が-0.39 矩形面積が0.56であった。 以上より 幼児期から高齢期までの生涯発達の中で、身体運動能力と空間的視点取得能力が関連するとの仮説を実証することができた。 この成果の一部を国際学会(ヨーロッパ発達心理学会)において発表するとともに、臨床医学領域の研究協力者と意見交換を行って、研究の総括に向けて準備を始めた。 さらに、幼児は課題実施状況がパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があったため、実験状況をビデオ録画し、幼児間のやり取りの特徴を分析するなど付加的な検討も行った。この結果は、全体のまとめと今後の研究テーマの設定に活用する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時に幼児から中学生まで各30名分収集するとした目標を、昨年度末に修正し、幼児のみ60名とすることにしたが、実際に収集できたのは44名分であった。一方、不足していた大学生のデータは10名分を追加収集できた。これらのデータを過去の大学生ならびに高齢者のデータと合わせて分析し、空間的視点取得能力と身体機能との関連を明らかにすることができた。また、次年度の研究総括に向けて、学会発表や研究協力者との意見交換等も行った。 以上より、研究目的の達成に向けて、ほぼ当初予定していた計画どおり順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
過去3年間の実験実施により、ほぼ予定していたデータを収集することができた。従って、研究最終年度にあたる平成30年度は、データの総括的な分析を行い、これを国外2箇所、国内1箇所の学会等において発表し、専門領域の研究者と意見交換を行って、分析と解釈の妥当性を高める。その成果を踏まえて、空間的視点取得の生涯発達モデルを構築することを目指す。最終的には研究結果を国内外の学術誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
平成27年度から平成28年度にかけて13万円程度の未使用繰越金があったが、平成29年度も予定していた数より収集したデータ数が少なかったため、さらに19万円程度繰越金が増えた。しかし、収集したデータ数は研究目標を達成するのに十分であると判断し、この繰越分は、当初予定していた心理学系の国際学会への参加に加え、近接領域である精神生理関係の国際学会にも参加して、より幅広い観点からデータを解釈するための知見を得るために使用する。
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Research Products
(1 results)