2017 Fiscal Year Research-status Report
超低出生体重児における発達障害様症状の特異性と発症メカニズムの解明
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15K04061
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金澤 忠博 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (30214430)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 超低出生体重児 / 発達障害様症状 / 発症メカニズム / 注意機能 / 周産期因子 / 読みの障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度の分析でASD様の症状が見られた児12名を含む47名の超低出生体重児を対象に分析を進めた。スクリーニングの方法について検討した結果、SCQが実際のASDの診断との一意率が高く、妥当性が確かめられた。周産期因子と認知発達や行動問題との関係を分析したところ、出生体重SDはWISC-ⅣのF-IQとの間に有意に近い正の相関が見られ、さらに知覚推理指数との間には有意な正の相関が見られた。人工呼吸器の装着期間が長いほど、攻撃性や素行障害のT得点が低く、完璧主義の傾向が強まる有意な相関が見られた。2017年度の新たな試みとして、23名の極低出生体重児(平均9.1歳)と23名の正期産児(平均9.2歳)を対象に読みのテスト(言語読み課題と非言語読み課題)、注意機能課題、音韻課題、命名課題の成績を比較した結果、非言語読み課題と注意機能課題の成績にグループ間で有意差が見られ、読み課題の成績と注意機能課題の成績との間に有意な相関が見られた。ステップワイズ重回帰分析の結果、読みの成績には注意機能による影響が認められた。さらに、極低出生体重児23名と正期産児35名を対象に、社会的相互交渉場面における視線行動についてアイトラッカーを用いて調べた結果、Listen phase(つまり、相手の話を聞いているとき)において、VLBW児はNBW児よりも話者の目を見た時間の割合が少なかった。相互交渉場面において話者の目をあまり見ないのは、ASD者の特徴でもある。本研究では、視線行動と注意機能の間には相関が認められ、注意機能の高い児ほど相手をよく見ていた。VLBW児の注意機能の問題が社会的相互交渉場面での視線行動に影響を与えることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
協力病院の検診体制の変更により、研究協力者の募集が停止されていたため新たなサンプルが集まらなかった。期間延長が認められたため、2018年度に新たな体制での健診がスタートすることが決定し、新たなサンプルを収集する予定になっている。既存のデータの分析を進めると共に実行機能の新たな尺度も加えたテストバッテリーを準備している。
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Strategy for Future Research Activity |
3月より、協力病院の新しい検診体制がようやくスタートし、現在研究協力者も集まりつつある。超低出生体重児の発達障害様症状の特異性と発症メカニズムの解明に向けて、新たな研究協力者を対象に、学齢期検診を実施し、超低出生体重児を対象にアイトラッカー等最新のツールやを活用するとともに、新たに実行機能の指標を取り入れた多面的定量的評価を進める。また、保護者を対象に半構造化面接を行い、担任教師に対しても質問紙調査を実施し、家庭や学校での学習面、行動面での総合的評価を行う。その上で、発達障害様症状と周産期因子との因果関係を分析し、超低出生体重児における発達障害様症状の発症メカニズムについて究明する。
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Causes of Carryover |
協力病院の検診体制が変更になり、本研究が当該病院の検診と連動して行われる仕組みになっているため、2017年度内での新たなサンプルの収集が困難になった。2017年度末から協力病院の新たな検診体制がスタートし、現在研究協力者が集まりつつある。2018年(次年度)に超低出生体重児を対象とした学齢期検診を実施し、認知機能、発達障害様症状の特異性と発症メカニズムの解明を行う。助成金は検診実施の際の研究補助の謝金や検査用具、研究成果の国内外の学会での発表の旅費等に用いる。
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Research Products
(22 results)