2015 Fiscal Year Research-status Report
高齢期の意思決定バイアスの解明と自律に向けた生涯学習プログラムの開発
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15K04066
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
増本 康平 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (20402985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩崎 麻里子 近畿大学, 社会学部, 講師 (40557948)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高齢者 / 加齢 / 意思決定 / バイアス / 感情調整 / 生涯学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,高齢者の意思決定バイアスの特徴を明らかにし,高齢者に適した意思決定の支援方法を明確にすることで,最終的には,高齢期の自律を目標とした「選び方を選ぶ」生涯学習プログラムを開発し展開することを目的としている。 H27年度は先行研究からから予測される高齢期の特徴的な意思決定バイアス(合理的な意思決定を妨げる選択の偏り)のなかでも,アンカリング効果とフレーミング効果に着目し,高齢者においてもこれらのバイアスがみられるか検討した。 アンカリング効果とは,ある対象の数値を推定する際に,その前に提示された数(アンカー)を基準にしてしまう現象である。本研究では,1)年齢によってアンカリング効果の強さは異なるのか,2)アンカリング効果の抑制に年齢の影響はみられるのか,を検証することを目的とした。高齢者40名,若年者40名を対象とし実験をおこなった。実験の結果,高齢者は若年者よりもアンカリング効果が強くみられること,さらに,高齢者はアンカリング効果についての説明と注意がなされても,アンカリング効果を抑制できないことが明らかとなった。 フレーミング効果とは,客観的には全く同じ内容を伝える言葉であっても,メッセージの示し方によって行動選択が大きく変わる現象のことをいう。本研究では,健康行動を促すパンフレットを使用し,健康行動への関心や動機付けにおけるフレーミング効果に年齢が及ぼす影響を検討することを目的とし,20歳代から70歳代までの男女計1248名を対象とした。結果,健康行動への動機付けへのフレーミング効果に年齢の影響はみられなかった。一方で,高齢者はネガティブなフレームで表記された内容よりもポジティブなフレームで表記された内容をよく記憶していた。 これらの研究は,意思決定バイアスが若年者と同等あるいはそれ以上に顕著にみられることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初はH28年度以降と考えていた成果の学術雑誌への掲載を初年度におこなうことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年次である本年度は順調に研究を推進し,成果を公表することができた。H28年度以降も当初の計画とおりに研究を推進する。
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Causes of Carryover |
共同研究者である塩崎氏が産休のためH27年度8月まで研究を実施できない状況であった。そのため,当初の計画とおりに予算を執行することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越額は,十分なサンプルサイズを有した信頼性の高い研究を実施するために, H28年度の実験・調査の経費にあてる。
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Research Products
(5 results)