2017 Fiscal Year Research-status Report
日本の青年における「主体的な人生形成」の様相について
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15K04067
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
中間 玲子 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (80343268)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アイデンティティ / 自尊感情 / 恩恵享受的自己感 / 理想自己 / 人並み志向 / 文化的自己観 |
Outline of Annual Research Achievements |
(研究1)-(2)-② 理想自己に関する尺度項目を作成し,その内容と主体性の感覚および自己決定の程度との関連を検討した。【方法】高校生321名,大学生各85名を対象に、①人並み志向尺度,②文化的自己観尺度,②賞賛・拒否回避欲求尺度,④DIDS,⑤自己決定尺度からなる質問紙調査を行った。①~③は,現代青年の理想自己の特徴的な次元をとらえるために既存の尺度を一部修正したものである。【結果】①~③の尺度は「①突出志向/人並み志向(負の関係)」,「②独立志向/協調志向(負の関係)」「③賞賛志向/拒否回避志向(正の関係)」の2因子に分けて検討した。DIDSからはアイデンティティ発達と反芻的探求の2得点を合成した。突出志向,独立志向,賞賛志向はいずれも自己決定・アイデンティティ発達と有意な正の関連を示していた。人並み志向,協調志向,拒否回避志向は自己決定とは負の有意な関係を示していたが,アイデンティティ発達とは関係がなかった。また,大学生では,突出志向/人並み志向,独立志向/協調志向,賞賛志向/拒否回避志向がいずれも反芻的探求と有意な正の関連を示していた。 (研究2)-(1)-① 高校生活の様相と自己感情およびアイデンティティとの関連を検討した。【方法】高校生1,362名(進学系427名,総合系216名,実業系719名)を対象に,①高校生活での行動の様子,②自己への悩み,③主体性の自覚,④進路決定,⑤生活感情,⑥アイデンティティ/自尊感情/恩恵享受的自己感についての質問紙調査を行った。【結果】⑥を目的変数に,①~⑤を順に説明変数として投入する階層的重回帰分析を学校種別に行った。アイデンティティ発達については,工業高校において特に高校での勉強の重要性が示された。自尊感情および恩恵享受的自己感については,校種を問わずクラブ・サークル活動の重要性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初29年度の予定であった(研究2)-(2)-①(「主体的人格特性尺度および主体的な人生形成の様相を問うアイデンティティ・ホライゾン尺度の日本語版を作成し、その妥当性・信頼性を検討する」)は平成28年度に実行できていたため,(研究2)-(1)-②(「自律的動機づけの概念に注目し、日常の行動への主体的取り組みの様相と、そこに付随する自己感情との関連を明らかにする。」)と,平成28年度予定であった(研究1)-(2)-②(「青年の理想自己の様相を数量的にとらえるため、理想自己に関する自由記述を元に、尺度項目を作成し、中学生から大学生にまで広く適用できる尺度を作成する。」)および(研究2)-(1)-①(「日常生活における行動の過程において、行動主体としての自己を認識する程度と、当該行動への積極的関与の程度との関連を検討する。」)とが29年度の課題となった。 (研究1)-(2)-②は高校生と大学生の調査にとどまったが,おおよその傾向をとらえることができた。平成30年度は北米地区との比較調査に向けての基礎的知見は得られたと考える。 (研究2)-(1)-①と(研究2)-(1)-②は,高校生活の行動の様相と,アイデンティティ,自己決定,自己感情との関連を詳細に検討するデータが収集できたため,それをもとにした分析によって順調に遂行することができた。当初予定していた自律的動機づけについては検討を行っていないが,それは,「主体性」概念の理論的検討を進める中で保留したためであり,許容範囲内の計画変更であった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は最終年度にあたる。前年度までの研究の成果を踏まえ、日本の青年にとっての「主体性」の実態について、それが人生形成といかなる関係を示すかという点に焦点をあてながら、発達および文化の文脈を考慮しながら「主体性」についての総合的な見解を得るための研究を進めることとなる。 (研究1)- (2)-③理想自己と親の発達期待との関係から独自性のパターンを作成し、それが主体性の感覚や自己決定の程度といかなる関連にあるかについて、検討を行う。【方法】平成29年度に整えた理想自己の項目を用いて,親からの発達期待との関連も考慮しながら,現代青年の理想自己の大まかな様相を明らかにすること,それが主体性の様相といかなる関連にあるのかを検討する。「主体性」の指標としては自己決定やアイデンティティの指標を用いているが,まだ検討中のところもあるため,理論的側面についても再度検討し,早急に決定する。 (研究2)-(2)-②主体的人格特性および主体的な人生形成の様相の尺度を用いて、日本および北米圏における調査を実施し、主体性の様相を比較的に検討し、日本における「主体性」および「主体的な人生形成」の様相の特徴を明らかにする。【方法】日本・カナダ・アメリカの大学生あるいは成人を対象とした調査を行う。国際研究に向けての調査票作成,共同研究の打ち合わせを早急に進め,実施する。 以上を遂行するとともに,これまでの成果を論文としてまとめる。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Identity Horizons Among Finnish Postsecondary Students: A Comparative Analysis2017
Author(s)
Helve, H., Cote, J. E., Svynarenko,A., Sinisalo-Juha, E., Mizokami, S., Roberts, S. E., & Nakama, R.
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Journal Title
Identity: An International Journal of Theory and Research,
Volume: 17
Pages: 191-206
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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