2015 Fiscal Year Research-status Report
発達障害の傾向のある子どもに対する医療と教育を結ぶための情報共有シートの開発
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15K04068
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
角南 直美 (角南なおみ) 鳥取大学, 医学部, 助教 (70715359)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 発達障害 / 情報共有シート / 教育と医療 / 連携 / 効果測定 / 質問紙調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療を受診する発達障害(傾向)を持つ子どものよりよい支援のために,医療と教育の連携構築の架け橋になる情報共有シートの開発を目的として以下を実施した。①文献研究:発達障害の傾向のある子どもに関する医療と教育の連携について国内を中心に文献を整理した。②質問紙1(「発達障害における小学校教師の医療に関する意識」)の作成と実施:教師の医療に対する意識と困難感を同定し次年度以降のシート作成の手がかりとするため質問項目を作成し,小学校教師約500名を対象に実施した。その結果,医療機関や保護者との連携に多大な困難感を抱えていること,基本的知識をある程度保持していること,医療的知識に対する不足感を有していること,医療の必要性を感じていること等の特徴が見出された。また,医療意識と発達障害研修会の参加回数について校務分掌の役割ごとに相関分析を行い日本発達心理学会にて発表した。更に,新規尺度の妥当性検討のため,年度末に2度目のアンケートを実施した。③情報共有シートの開発と実施:脳神経小児科医師4名・小学校教師3名・小学校校長4名とシートの教育項目を中心に試案を作成後,1校の協力校で実施した。④質問紙2(「情報共有シート使用前後のアンケート」)の作成と実施:シートの有用性を確認する質問紙を作成し,協力校の担任及び支援員に対し実施したところ,子ども理解の深まりと情報の整理と焦点化等の有用性と記入欄に関する課題の言及があった。⑤担当の医師(研究協力者)と協力校での関係者会議に出席しシート使用に関する具体的検討により,記入が容易になると子どもの特徴が掴みやすくなること,シート内容の検討から話し合いの回数が増えより有効な支援が増加し子どもの肯定的変化につながったこと等の意義と最初の記入方法の提示の必要性等課題が確認できた。⑥協力校と協力地域で特別支援教育講演を実施し現段階での研究成果を教育現場に還元した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
情報共有シートの開発に向けた準備段階での情報収集と検討に時間をかけ各専門分野の方から丁寧に意見を聞き取り,教育項目を中心に試案を作成し実施した。その後,協力者に実施前後でアンケートを依頼し直接感想を聞くことができたため,次年度のシートの改善につながった。また,シート開発の手がかりとなる質問紙1(「発達障害における小学校教師の医療に関する意識」)の実施は,当初1度の質問紙調査の実施計画であったが新規に作成した質問紙項目であったため信頼性と妥当性の確認および分析の幅を拡大する目的で,予定を超え自治体の全面的な協力を得て2度目の質問紙調査を実施した。対象人数も,当初の予定である370人を上回り,前半509名,後半515名と増加した。また,次年度予定のデータ入力及び分析の一部を前半のみ前倒しで実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
①文献研究の明文化:発達障害傾向のある子どもに関する教育と医療の連携に関する内容を明文化し,現在の我が国における状況について考察する手がかりとする。②質問紙1のデータ入力と分析:教師の医療に関する意識を関連要因との相関から検討する。③情報共有シートの開発・修正・実施:医療項目の作成と教育項目の修正を加えた情報共有シートを実施する。④質問紙2の実施:引き続き,質問紙2を情報共有シート実施前後で依頼する。⑤検討会の実施:シート開発・修正・実施及び検討を同時進行で行っていくため,連携研究者と随時検討会を設けシートを改良していく。⑥教師研修会の実施:これまでの結果を基に発達障害に関する教師研修会を実施し,研究成果を教育現場に還元する。
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Causes of Carryover |
アンケート調査を当初の1回から,新しく作成した尺度のため信頼性と妥当性を確認する必要から2回に増やした。そのため,アンケート調査が年度末までずれ込んだため,分析ソフト購入を次年度に繰り越した。また,分析ソフトの最新バージョンが次年度5月末から発売のため,その購入時期も見越して繰り越しした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度,5月末に欠損値処理ソフトを含めた分析ソフトを購入し,それを使用して本格的にデータ分析を実施する予定である。
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