2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K04075
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中村 知靖 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (30251614)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 教育測定・評価 / 心理測定 / 項目反応理論 / 情動認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)場面想定による情動理解テストの試作版を作成した。設定した場面は,家庭での母とその子ども兄弟のいざこざによる感情場面,電車での優先座席を巡る若者,高齢者,中年女性の感情場面,公園で転んだ子どもに対する若い女性と老年夫婦の感情場面であり,テストの内容は各場面において登場する人物の感情とその理由を尋ねるものである。大学生60名にテストを実施し,項目反応理論を利用して項目分析を行った。分析の結果,テスト全9項目に関して一次元性が確認され,項目パラメタから,場面によって登場人物の情動理解に対する困難度が異なることが明らかとなった。また,個人パラメタをもとに情動理解能力の性差を確認したところ,有意な差は得られなかったが,傾向として女性の方が情動理解能力値が高かった。 2)場面想定による情動理解テストの項目を充実させるために,他人の気持ちを利用するような日常場面に関して,自由記述による調査を行った。回答者は大学生60名である。自由記述を分類した結果,公共の場では,列に並んでいるときに他人に割り込まれたとき,電車で音漏れしている人の周囲にいる人たち,公共交通機関で子どもが静かにしていないときの周囲の人たち,家族場面では,大学受験を控えた弟が母に受験の話をすると聞く耳を持たない,兄弟で年上の方が年下の気持ちを汲んで我慢するとき,学校やアルバイト場面では,食堂において仲間内で笑っている,理不尽なことで怒られている友人を見たとき,皆で何かをするというときに、失敗してそれを台無しにしてしまった人を見たときが場面として取り上げられていた,今後,上記で得られた場面をもとにテスト項目を作成する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試作段階であるが情動理解テストを作成し,項目反応理論に基づいた尺度作成が可能であることが分かった。また,新項目作成のための場面に関する情報も自由記述によって数多く得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
情動理解テストに関しては,自由記述によって得られた場面をもとに,新規項目を作成し,テストの精度を高める予定である。また,表情認知テストの標準化も進め,表情認知テストと情動理解テストとの関連性を検討し,総合的な情動認知テストの作成を目指す。
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Causes of Carryover |
年度途中で雇用していた学術研究員の就職が決まり,その後任を埋めることができなかったことと,国内で開催された国際学会参加費の経費が当初予定したよりもかかったため,費目によっては,計画通りの執行とはなっていないが,総額としてはほぼ予定通りである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は2,000円弱であり,これまで本課題で行った研究の資料整理のための経費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)