2016 Fiscal Year Research-status Report
筆記具の持ち方の指導法改善に関する基礎研究―日本と欧州の比較を通して―
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15K04083
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
小野瀬 雅人 聖徳大学, 児童学部, 教授 (40224290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 慶子 長崎大学, 教育学部, 教授 (40264189)
千々岩 弘一 鹿児島国際大学, 福祉社会学部, 教授 (90163724)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 筆記具の持ち方 / 書字学習 / 国際比較 / 実証研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、書字の入門期にあたる初等教育学校の第1学年の子ども(6-7歳児)を対象とし、ドイツ連邦共和国、日本国内のドイツ人学校、日本国内の公立学校において「筆記具の持ち方」の調査と第1学年担当教員を対象とした面接調査を行った。 ドイツ連邦共和国での調査(平成28年6月実施)は、現地の学校の要望によりデジタルカメラによる画像撮影ができなかったため、研究代表者と研究分担者が対象児童の筆記具の持ち方を観察法により調査した。その結果、ドイツ人の子どもが通う伝統校では、ドイツでの標準的は筆記具の持ち方(日本の教科書にある持ち方)をしている者は約40~50%、それに対し、移民の子どもが多い学校では約20%であった。教員への聴取から、伝統校の子どもの家庭では就学前に「筆記具をもって書くこと」は一切行わないが、移民の子どもの家庭ではドイツ語が第二言語となるため、就学前より書くことの指導を家庭で行っていることが明らかになった。 日本国内のドイツ人学校での調査(平成29年3月実施)と日本国内の公立小学校での調査(平成29年2月実施)の結果は分析途中であるが、いずれもドイツ連邦共和国における伝統校よりも日本の教科書にある持ち方をしている者の割合は約30%で、ドイツの伝統校より低い傾向にあった。国内のドイツ人学校は、在日ドイツ人や日系ドイツ人の子どもが通っている学校である。教員への聴取から、日本のドイツ人学校の子どもたちは、就学前から「塾」等で、すでに「書くこと」の学習を始めている者が多いことが明らかとなった。 以上の成果は、12月に神戸市で開催予定の日本応用教育心理学会第32回研究大会で発表を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の日本人大学生の調査、日本人教員調査を踏まえ、平成28年度は、ドイツ連邦共和国、在日ドイツ人と日系ドイツ人の子どもが通う国内のドイツ人学校、及び日本の公立小学校において、いずれも第1学年(6-7歳児)の子どもの筆記具の持ち方のデータを収集することができた。また、それぞれの学校の担当教員から、子どもの筆記具の持ち方の実態と指導の状況を聴取することができた。ドイツと日本国内のドイツ人学校では、ドイツのカリキュラムに基づき指導が行われている。ドイツの学校のカリキュラムは州により異なるが、日本と同様、就学後に筆記具の持ち方指導と書字指導が始まる。しかし、日本以上に厳格に行われている点、第1学年における書字指導の時間が多い点において異なっている。2月と3月に実施した調査結果について分析中であるが、現時点では、就学後の筆記具の持ち方の定着には、就学前の状況と就学後の指導の両方が影響していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の日本とドイツでの国際比較調査の結果から、書字の入門期における筆記具の持ち方の習得に影響する要因として、就学前の書字の状況と就学後の指導の方法が示唆された。そこで、平成29年度は、前年度の調査結果の信頼性を確認するため、前年度と異なる国内地域の小学校1年生を対象とした筆記具の持ち方調査を研究分担者が実施する。また研究代表者・研究分担者が平成28年度の研究協力者とともにドイツ連邦共和国において、前年度と異なる学校での第1学年の子どもを対象として調査(11月に予定)を実施する。これにより、入門期の書字指導の要となる「筆記具の持ち方」の就学前の状況と就学後の指導の影響が明らかになるものと考える。平成29年度は本研究課題の最終年度に該当するので、3年間の調査結果をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
分担者1名が病休により海外調査や研究打合せに参加できなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度計画中の海外調査及び研究打合せ費に充てる予定である。
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Research Products
(8 results)