2015 Fiscal Year Research-status Report
メディアの混合利用における批判的思考プロセスおよびその促進方法の検討
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15K04084
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
犬塚 美輪 大正大学, 人間学部, 准教授 (50572880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沖林 洋平 山口大学, 教育学部, 准教授 (20403595) [Withdrawn]
田中 優子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30701495)
道田 泰司 琉球大学, 教育学部, 教授 (40209797)
椿本 弥生 公立はこだて未来大学, システム情報学部, 准教授 (40508397)
石原 康臣 大正大学, 表現学部, 講師 (60557198)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 批判的思考 / 理解 / SNS / テレビ視聴 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,メディアの混合利用の例として,テレビとSNSの混合利用に焦点を当て,視聴後の理解と批判的思考について検討する。H27年度は研究計画の第一段階として,ダミーのSNSコメントが提示されることによって,理解と映像視聴後の判断に影響があるかを検討した。映像題材には,偽化学(EM)の河川浄化効果についての討論番組を作成して用い,SNSのコメントが提示される条件と提示されない条件で視聴前後の判断と視聴中の眼球運動を測定した。
H27年度の前半は,小グループごとに実施した予備的検討の結果についてまとめ,学会(日本心理学会,認知科学会)で発表した。予備的検討の結果を受け,アセスメントグループで事前事後の題材を再検討し,事前課題として,偽科学への親近性,Cognitive Reflection Test (Frederick, 2005),EMに関する判断に関する問いを設定することとした。事後課題では理解度テスト,EMに関する判断,SNSを提示された条件では提示されたメッセージに関する評価を求めるよう設定することとした。
H27年度後半は,眼球運動測定装置(Tobii TX-60)を用い,視聴中の視線を測定する個別実験を実施した。実験の結果,SNSコメントの有無に関わらず,討論を視聴した後には偽科学に対して否定的な反応をするように変化していることが分かった。変化の程度は,SNSコメントが提示された条件においてより緩やかである傾向が見られ,SNSコメントが視聴者の判断をより保守的にすることが示唆された。眼球運動のデータからはSNSコメントへの注視に関する内観が必ずしも一致していないことが分かった。ここから,メディアの混合利用において,視聴者の感覚のみを基準としてその影響を検討することには限界があると言える。得られた成果は2016年度の国内外の学会で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験開始直後に代表者所属先で使用していた眼球運動測定器が故障し,修理と調整が必要な状況になった。また修理と調整が必要だということが判明するまでに実施した分は視線の取得率が著しく低いものも多く,分析に耐えるデータを十分に取ることができなかった。そのため,H27年度後半の実験の精度が低くなってしまい,実験実施をやり直す必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って研究を推進する方針である。ただし,H27 年度の実験実施をやり直す必要があること,また実験全体の構成を再考したため,H28年度についてはつぎのように変更する。
まず,前半についてはダミーのコメント提示による影響の検討に当てる。ここでは,H27年度より検討していた「中立的なコメント」と「偽科学についての討論」の検討を実施する。平行して映像の編集作業を進め,偏った主張がされている場合や偏ったSNSコメントが提示される場合を検討する。これらの検討を通して,SNSコメントが「他者の視点を提供すること」で視聴後の判断を保守的にする可能性を検討することができると考えたためである。28年度後半には,自発的投稿を取り入れた検討を行なうが,このときには討論場面と主張場面の両者についてあわせて検討を行なう。これらの検討を通して,SNSコメントがテレビ視聴後の理解や批判的思考に与える影響について,関連する要素を明らかにする。
H29年度H30年度は当初の計画通り進める予定である。H28年度までに得られた知見をもとに,SNS活用に関する教育介入とシステムの提案についての研究を推進する。
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Causes of Carryover |
実験に使用していた機器(眼球運動測定器)の故障などにより,実験実施が計画通りに進められなかったため,謝金および人件費として必要が見込まれていた金額に余りが生じたことにより次年度使用額が生じた。また,打合せを学会などの出張とあわせて実施できたことや,実験の進展にあわせて実施予定であった打合せを行なわなかったことなどにより,旅費の支出額が少なくなったことも次年度使用額が生じた理由として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験実施に必要だと見込んだ謝金および人件費については,そのままH28年度の実施時に使用する。またそれに伴い打合せが必要になると想定されるため,そのための旅費として使用する。
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Research Products
(3 results)