2015 Fiscal Year Research-status Report
養子縁組家族において育つ子どものアイデンティティ形成に有意義な支援モデルの検討
Project/Area Number |
15K04089
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Research Institution | Kamakura Women's University |
Principal Investigator |
正木 庸子 (富田庸子) 鎌倉女子大学, 児童学部, 准教授 (10288102)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 養子縁組 / テリング / 非血縁家族 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、養子縁組によって乳幼児期に育て親の元に迎えられた子どもが、自己、育て親、産みの親、家族関係などに関する理解を深めてアイデンティティを形成していくために有意義な支援のあり方を「子どもの側」から検討し、子どもが真に必要とする発達支援モデルの構築を目指すものである。具体的には、日本で20年以上にわたって乳幼児の養子縁組を支援しているNPO環の会の全面的協力を得て、(1)テリング(育て親が子どもを迎えた直後から、産みの親の存在や子どもの出自に関わることがらを日常の中で子どもの発達に応じて伝え続けること)の有効性(2)特別養子縁組成立後も育て親家族が産みの親側との交流を継続することの有効性 を検証する。 平成27年度は、育て親のもとで成人した子どもたちへのインタビュー調査に着手した。具体的には、(1)テリング、産みの親、育て親家族に関する質問項目を決定し、インタビューガイドを作成した。(2)育て親家族における養子縁組や産みの親に関するコミュニケーションのオープン性について、子どもの認知を測る質問紙を作成した。(3)育て親のもとで育ち平成27年12月末までに成人した40名の子どもたちに調査協力を依頼した。協力を承諾した7名に対して、平成27年11月~平成28年1月、NPO環の会事務局でインタビュー調査を実施した。 調査結果の本格的な分析・考察は、次年度以降のデータ蓄積を踏まえて進めることとなるが、現時点では(1)子どもたちは、事実を伝えられることの是非と事実を受け入れられるかどうかとは別だと考えていること、即ちテリングをすること自体は当然だと考えていること、(2)子どもが自分の生い立ちを受け入れて自らの言葉で語るためには、養子縁組や産みの親についてオープンに語り合う家族の雰囲気や、子どもの不安や疑問を受け入れる育て親の態度が重要であることなどを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は個人の内面に深く関わる内容であるため調査協力者が少人数になることは想定していたが、就職活動や健康上の問題などを理由として次年度以降の調査を希望するケースもあり、平成27年度は40名中7名のインタビュー実施にとどまったことを「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きインタビュー調査の実施・分析を進める。平成28年度は12名、平成29年度は16名の子どもたちに調査協力を依頼する予定である。本研究は欧米では推奨されながらもわが国では少数派のオープンアダプションに関わる当事者の声に迫るものであり、少人数のデータであっても質的分析に十分な意義があると考えるが、状況によっては、倫理的配慮を十分に行いながら対象範囲を18歳以上に広げることも検討する。また、育て親たちへのインタビュー調査も併せて検討する。 得られたデータの分析・考察を進め、その結果を学会等で随時発表するとともに広く意見を求め、日本における養子縁組の特徴や支援のあり方を明確にしていく。
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Causes of Carryover |
最も大きな要因は、インタビュー調査協力者が予定よりも少人数にとどまったことから、交通費等の支出が抑えられたためである。それに伴って必要な物品の購入も次年度以降に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インタビュー調査のデザインを再検討し、最大の研究成果が得られるように配慮しながら研究を進めていく。質的研究法TEAによる分析を深めるために、平成27年度にインタビュー調査を実施した調査協力者に対しても追加調査を実施する。また、育て親に対する調査も併せて行っていく。
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