2017 Fiscal Year Research-status Report
養子縁組家族において育つ子どものアイデンティティ形成に有意義な支援モデルの検討
Project/Area Number |
15K04089
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Research Institution | Kamakura Women's University |
Principal Investigator |
富田 庸子 鎌倉女子大学, 児童学部, 教授 (10288102)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 養子縁組 / テリング / 非血縁家族 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、養子縁組によって乳幼児期に育て親のもとに迎えられた子どもが、自己、育て親、産みの親、家族関係などに関する理解を深めながらアイデンティティを形成していくために有意義な発達支援のあり方を、子どもの側から検討するものである。具体的には、テリング(育て親が子どもに産みの親の存在や子どものルーツに関わることがらを日常の中で子どもに伝え続けること)や産みの親との交流継続といった支援の有効性を検証する。 平成29年度は、前年度までに引き続き、日本で20年以上にわたり乳幼児の養子縁組を支援してきたNPO法人環の会の協力を得て調査を行った。育て親のもとで成人した子どもに対するインタビュー調査とともに、育て親に対する質問紙調査を実施した。 調査結果の本格的な分析と考察は、平成30年度の結果を踏まえて行う。現時点で確認されている成果の概要は以下のとおりである。1.子どもたちは、育て親がテリングをすること自体は当然であると考えている。2.幼い時期からのテリングは、自身のルーツを突然知らされることによる混乱や葛藤から子どもを守る。3.子どもたちは、テリングをすることと自分のルーツを受け入れることとは別の問題であり、真実を隠されることは容認できないと考えている。4.産みの親との継続的な交流が精神的安定をもたらす。5.産みの親との交流が難しい場合に育て親が産みの親の気持ちを代弁することがかえって子どもの不信感を生じさせるケースが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究協力者の体調不良などのために研究体制に支障が生じた。また、調査協力を予定していた対象者が留学等のため調査をやむを得ず延期することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究体制を再構築し、引き続きインタビュー調査を実施していく。状況によっては倫理的配慮を十分に行いながら18歳以上に調査対象を広げる。得られた結果は前年度までの調査結果とあわせて総合的に分析し、最終年度に報告会を実施して広く意見を求める。
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Causes of Carryover |
(理由)インタビュー調査協力者が予定よりも少人数となり交通費等の支出が抑えられたこと、人件費や謝金について研究協力団体からの調査活動協力費が支出されたことが主たる理由である。 (使用計画)年度当初に必要な物品の購入を進める。インタビュー調査のデザインを再検討し、最大の研究成果が得られるように配慮しながら研究を進めていく。前年度までに調査を実施した協力者に対しては2018年12月に中間報告を行い、追加調査を実施して総合的考察を行う。2019年3月に日本発達心理学会においてラウンドテーブルを開催する。
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