2016 Fiscal Year Research-status Report
歩行開始期における他者の心の理解の発達に対する自己覚知および母親の感情鏡映の影響
Project/Area Number |
15K04099
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Research Institution | Kyushu Lutheran College |
Principal Investigator |
久崎 孝浩 九州ルーテル学院大学, 人文学部, 准教授 (70412757)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自己覚知 / 心の理解 / 親の感情鏡映 / 1歳児 / 強化学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,乳児の自己覚知のしやすさを計測するためのプログラムが完成し,実際に乳児とその保護者にそのプログラムを用いた実験的調査に参加いただいた。プログラムは,乳児の口の開閉に随伴してタッチスクリーン上に手がかり刺激が提示されて,それが点滅している間に乳児がその刺激にタッチすると強化刺激が出現するというものである。このプログラムはWatson et al.(2011)のプログラムに倣っているが,Watson et al.では手がかり刺激への注視によって強化刺激が出現するのに対して,本研究のプログラムでは手がかり刺激へのタッチによって強化刺激が出現する。このプログラムに対する12ヶ月周辺の乳児の反応を記録・観察したが,Watson et al.の研究結果のように手がかり刺激への応答は見られず,乳児自身の口の開閉によって手がかり刺激が提示されることに気づいているか否かを明確に捉えることができなかった。おそらく,視線反応とタッチ反応の差異によるものと思われる。 また平成28年度は,自己覚知の実験に参加した乳児は引き続き18ヶ月時に他者の心の理解の課題を実施する計画であったが,自己覚知の計測が十分でないために,そこに至らなかった。 平成29年度では,より多くの乳児の参加を対象月齢の幅を広げて募集する予定である。また,実験的調査の前に母親と乳児のやりとりを観察しているが,そのやりとりの中で見られる母親の感情鏡映的関わりを計測し,乳児の自己覚知のしやすさとの関連性を検討する予定である。さらに,18ヶ月時点での他者の心の理解の課題を実施し,他者の心の理解が自己覚知や母親の感情鏡映とどのように関連するかを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
自己覚知の計測プログラムは完成してデータを収集しているが,予想していた乳児の応答反応があまり見られずデータ収集を継続しており,平成28年度の計画である18ヶ月時点での他者の心の理解の課題までは実施していない。計画では,乳児の自己覚知に母親の感情鏡映が関与するのか,他者の心の理解に自己覚知や母親の感情鏡映が関与するのかについてデータ分析をする予定であったが,そこに至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
乳児の自己覚知のしやすさを計測するためのプログラムは完成しており,10~16ヶ月の乳児の参加を募集して調査を実施しデータを集積する。募集においては現在,市内の幼稚園や保育所に出向いて保護者にチラシを配布するなどして募集を呼びかけて,多くの参加を募っている。各月齢で一定のデータを得た段階で,自己覚知のしやすさに関する月齢差を分析し,自己覚知のしやすさの個人差を幅広く捉えることのできる月齢を特定する。 その分析の終了とともに,参加した乳児の名簿をもとにリクルートし,参加可能な乳児と保護者に18ヶ月時点で再度来訪いただいて他者の心の理解の課題を実施する。他者の心の理解の課題では食べ物を使用する2条件とオモチャを使用する2条件を研究実施計画では想定していたが,食べ物の使用は倫理的・衛生的問題が生じる可能性が高いため取り止めて,食べ物をオモチャに替えて実施することにする。
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Causes of Carryover |
平成28年度では,実験プログラムが完成して調査を開始したが,十分なデータ集積には至らず,調査協力者であるスタッフや参加者である乳児と保護者への謝礼金を支払うことが殆どなかった。また,試験的にデータを集めるところで平成28年度終了を迎えデータ分析はできなかったため,国内外で発表する機会を得ず旅費の使用もなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度では,10~16ヶ月の乳児の参加を募集して自己覚知の測定調査を実施し,データを集積する予定である。さらに,18ヶ月時点での乳児の心の理解に関する実験的調査も実施する予定である。それに伴い,スタッフへの謝礼支払いが増えることが見込まれる。また,参加者に謝礼金を支払うことはせずに,それに替わる物品を謝礼として渡すことを考えており,それらは「その他」の費目から購入する予定である。また,平成29年度では,集積したデータの分析結果を日本発達心理学会で発表することや,国際学会での発表にエントリーすることを考えており,それらの発表における移動や宿泊のために旅費を使用する計画を立てている。
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