2015 Fiscal Year Research-status Report
離婚母子家庭の子どもと、別れて暮らす父親との面会交流に関する心理学的縦断研究
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15K04111
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
堀田 香織 埼玉大学, 教育学部, 教授 (10251430)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 離婚 / 父親 / 心理的発達 / 性役割 / 家族システム |
Outline of Annual Research Achievements |
離婚後子どもと別々に暮らす父親の存在は子どもの発達に良くも悪くも影響を与え続けている。今年度は、両親の離婚を体験し父親と別れて暮らしている20代の息子へのインタビューをもとに、良好な関わりの続いている父息子の関係について考察した。 発達的に見ると、学童期までは、父子交流が離婚しても父親であり続けてくれることの証として体験されたことが語られたが、思春期に入ると部活やアルバイトで父子の関わりは少なくなる。やがて、母親からの心理的自立が進むと、父親との関わりは再び多くなる。そこで生じる現象としては、①母親から受け継いだ父親の否定的イメージの見直し、②母親の客観的評価のし直し、③離婚の原因の客観的認識、④離婚家庭の子どもというアイデンティティの捉えなおしがある。また、この間、父親と離れて暮らすことで生じる現象として語られたのは、①母親とは異なる父親の行動・価値観の持つ新規性への興味関心、②離れて暮らしているからこそ維持される父親の肯定的イメージ、③短い時間だからこそ拡大化される父親の存在感である。性役割の観点から見ると、父親の父性性は時に恐ろしく感じられることもあり、父息子との間に受容的母性的な愛着関係が形成されて始めて父性的な関わりが有効に機能する。また、同居している母親が担う役割との相補的な機能を担う傾向にある。家族システムの観点から見ると、思春期において、別れて暮らす父親との間に心理的葛藤が生じにくく、反抗の対象は母親になることが多い。離婚母子家庭と父親の家族システムでは、父息子連合が、母親の難しさを共有し、子どもに母親理解を促し、母親との距離をとることを促す。父親は離れているがゆえに理想的な男性像として、同時に、離婚という失敗から立ち直る男性像として機能しており、離婚家庭においても、息子は父親に同一化しながら男性役割を形成することが見いだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は20代青年を対象としたインタビューを行い、全体としておおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1 親の離婚を体験した青年のインタビュー調査を継続し、ケース数を増やす。また女子青年と父親との関わりが及ぼす影響について考察する。 2 親の離婚を体験し心理的治療を受けている子どもの臨床例の分析を行う。 3 離婚母子家庭でこどもを養育してきた母親、および別れて暮らし、子どもとかかわりを続けている父親へのインタビューを行う。
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Causes of Carryover |
当初、初年度から行うはずだった、母子家庭調査を次年度以降に変更し、初年度は対象を母子家庭で育った青年にしぼって行ったため、支出を軽減することとなった。これは対象を限定することで集中的に調査・分析を行うことを可能にしたかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度、母子家庭調査を加えるために、その調査費用として人件費や機器が必要となる。また付随して図書も必要となる。
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