2016 Fiscal Year Research-status Report
思春期の双極性障害傾向と自己制御機能との関連に関する発達心理学的研究
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15K04112
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
田中 麻未 千葉大学, 社会精神保健教育研究センター, 特任助教 (90600198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 謙二 千葉大学, 社会精神保健教育研究センター, 教授 (10189483)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 双極性障害傾向 / 自己制御 / 思春期 |
Outline of Annual Research Achievements |
双極性障害の平均発症年齢は20代前半とされているものの,それ以前の発達段階については注目されてこなかった。しかしながら,近年,子ども特有の双極性障害の存在が取り上げられるようになってきており,児童期の発症も少なくないことが報告されている(Blader et al., 2007)。特に子どもの場合,注意欠陥・多動性障害(ADHD)との識別が難しいことが指摘されているため,ADHDの徴候を含めた検討が必要であると考えられる。 そこで,平成28年度の調査では,昨年度の1波目の調査に引き続き2波目の調査と9-16歳の子どもがいる母親回答による質問紙調査を実施した。とりわけ本年度は,双極性障害傾向とその影響要因との関連についてより詳しく調べるために,双極性障害傾向と併存症の高いADHD傾向の徴候の有無による比較検討をおこなった。その結果,(1)ADHD傾向の評価基準を超えていない群では,パーソナリティ特性の一つである自己制御の低さが双極性障害傾向を高めるという結果が得られた。一方,ADHD傾向の評価基準を超えている群では,自己制御と双極性障害傾向との間に関連は認められなかったものの,双極性障害傾向の下位尺度である攻撃性に対して自己制御が負の影響を及ぼすことが示された。また,(2)ADHD傾向の有無にかかわらず,環境要因としての母親の抑うつは子どもの双極性障害傾向を高めることが示された。これらの結果から,ADHD傾向の徴候に留意した検討は,双極性障害傾向に影響を及ぼす子ども自身の特徴の違いを明らかにし,より効果的な改善・予防につながる知見を得られる可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画していた調査研究を実施することができた。また,来年度実施予定であった認知機能と双極性障害傾向との関連についての予備調査を行うこともできた点で,おおむね順調に進展していると考える。これまでに得られたデータについては,できるだけ早く研究業績としてまとめることができるよう努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点において,研究計画書からの変更や修正などの予定はなく,研究を遂行する上での問題点もない。次年度も,引き続き本研究課題の目的である縦断研究のため調査を実施する。また,必要に応じて精神医学・精神神経科学・心理統計学など他領域の専門家にも知識提供を仰ぎながら研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
本年度に実施した2回の質問紙調査のデータ入力にかかる費用のうち,1回分のデータ入力の費用が若干不足してしまったため,次年度の予算を得て改めて使用することとした。このため,次年度使用額が発生してしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度分の余剰額は,回収済みの調査票のデータ入力と次年度の質問紙調査の実施に充てる予定である。
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